第3話 魔法は少女だけのものじゃない

 彼は小説を書く人だった。読む人でもあった。彼の祖母は本をたくさん読んでくれる人で、その後本に囲まれた人生を送る。彼の作った本は広く愛され、絵本になったり映画になったりした。


 とあるひとりの男が本の中に入っては出てきて、いろんなお話を冒険していく。そんな異世界ファンタジーが彼の代表作であり、他は短編ばかりだ。時には仲間になりともに涙を流し、敵になり憎まれ必殺技を受け死んでしまうこともあった。


 読者はハラハラドキドキする。彼ははじめの世界のトラックの運転手になっていた。全部夢だったのか。魔法をかけられたのか、実験でもされていたのか。


仮眠から起き出し、お気に入りの曲を流す。生きていてよかったとは思わない、また同じ毎日のはじまり。事故は起こさないよう、安全運転を心がけて。


 家に帰った彼は違和感を感じていた。自分はこんなになにもしていなかったのかと、仕事をして帰ってきて、寝て起きて仕事にいく。たまに友人と騒ぐ酒や歌を楽しみに。世界を旅していたころは、本の中にいたころはもっと楽しかった。ああそれでトラックの免許をとったんだったな。長距離運転がしたくて。彼はまた自室の布団に寝転がる。


 夢に落ちる手前、彼は思い出した。

 本はどうしたんだ、売ったのか?

 読者は知っていた。彼は読書が好きな会社員、時々自分でお話を考えるような。だからトラックの運転手ではない。


 そうか、また何かの話の中にいるのか。死んだから今までのように自分が自分じゃなくなったのか。彼は運転手仲間の酒の席でその話をした、仕事場でも話すことにした。精神病院に連れていかれた。薬のおかげで彼はまた違う世界へと旅立った。


 彼は森の中に倒れていた。

 少し肌寒い、暗い森の中、彼の意識はまだ戻らない。コウモリは彼を見つけると、誰かに知らせるために飛んでいった。




魔法の使い方を考えていた


 彼は彼女を作った。理想の女性だといっていた。私のこの姿、師匠にそっくりにしてみた。彼は自分のお話のキャラクターに恋をした。叶わぬ恋を。


 もしも魔法が使えたのなら

 一時でも幻でもいい

 彼女に会いたい

 彼女と暮らしたい

 魔法は少女だけのものじゃない

 僕にも使えると思ってた

 会いたかった


 彼は魔女と魔女の弟子、吸血鬼、小鬼、他にもオリジナルでモンスターを作った。人間界の空の上、案外ミサイルなんかが届くあたりにその世界は作られた。そうだよ、そのせいで最近じゃ時々飛行機とか隕石とか偶然降ってきたりするんだ。

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