天懸地隔
「⁉」
意識をなくしていたと気づいた
自分は
だが
「病室?」
「リッカ!」「
「みんな!」
ベッド脇の椅子に、
バッ‼
「えっ⁉」
「な、
「よかったぁ……!」
「心配させて……!」
「……ごめん。ありがとう」
内心は大慌て。
だって2人の体の感触が、体温が、息遣いが、いい匂いが! 膨大な五感情報が挟みうちで押しよせてくる! 中でも特に気を取られるのが、自分の胸に押し当てられた2人の双丘‼
(
右の、前から『大きいな』と意識しまくっていた
左の、これまで服の上からでは少しはあるのか少しもないのか不明だった
待望の、2人のおっぱい。
そこに胸部で服越しにとはいえ接触を果たしたことで、
それは性的に興奮している、つまりスケベなことを考えている証拠! 現在2人の脚は
軽蔑されて嫌われる‼
「あっ……」「
男が女性の体に勝手にふれるのはアウトだが今回は向こうから抱きついてきているのだし、これくらいは大丈夫だろう。むしろ受けとめる反応をしないほうが冷たいし。
2人の体をさりげなく左右にズラす。
2人の脚がチンコから離れるように。
それには成功したが2人の胸も密着したままズレて、感触は伝わるし2人は『あっ♡』となんかエロい声を出すしで、膨張率は増してしまった。
ズボン内部の物体が膨張するほど、ズボンに脚を乗せている2人にその張力が伝わる率も高くなる。かえってバレやすくなったのではと怯える
「「助けてくれて、ありがとう」」
熱い吐息が耳にかかる。余計ドキドキしてしまうが、2人から感謝を伝えられているのに話が耳に入ってこないなど言語道断。
「どう、いたしましてッ!」
「わたし、また
「もちろんだよ、
「む。今回はアタシもよ、
「
ふにっとした感触が追加された。
いかん、話に集中!
「むーっ」
これまで
そんな恩のない
だが
なので、これから距離を詰める。
「
「アンタだって『追加のお礼』とか言ったくせに! それなら、もっと仲良くなれば、いいんでしょ? た、
「あーっ!
「ちょ、2人とも待って!」
2人の気持ちは嬉しいが、これが相手の命を救ったご褒美なら自分だけ享受するのは間違っている。
「トキワ」
「ん」
「2人を守ってくれて、ありがとう」
「なに、当然のことだ。俺のほうこそ、ありがとう。これで俺もお前に命を救われた身になったな。お礼に俺も抱擁しようか?」
「結構です」
「だろうな」
大好きな親友だが同性に抱かれても嬉しくない。丁重にお断りすると
「
「うん。もちろん言ったよ」
「アタシも
「俺は2人から抱きつかれていないがな」
ギクッ!
「い、
「ハグしよう、か……?」
「いい。要求したわけではない、安心しろ。それよりもリッカを放してやれ、それじゃ落ちついて話ができんだろう」
「「は~い」」
2人の体が離れていく。
ハグを辞退するとは、なんてストイックなんだ。
(って、平和だなぁ)
こんなこと、のんびり考えていられるのも窮地を脱したから。
目覚めてから慌ただしくて思う暇もなかった、本当は一番に思うはずだった気持ちがしみじみ、あふれてくる。
(助かったんだ、僕たち)
あの地獄でひたすら念じていた。自分・
ああ、本当に、よかった。
¶
「まず──」
避難所についた3人は
そんな話を直接3人が消防団に言っても信じてもらえなかっただろうが、人型ロボットは常陸製だし、虎型ロボットは常陸の者たちも見ている。
彼らがうまいこと言ってくれて、消防団が
虎型ロボットは自爆したらしい。
それが常陸の技術者の見解。
だから
ブルームは火災現場など有毒ガスが発生している場所でも運用できるよう、コクピットを密閉して酸素ボンベから機内の空気に酸素を供給、温度も最適に保つシステムを導入していた。
それが破壊されれば死んでいた。
『これに乗っていれば火を防げる』と考えた
閑話休題。
3人はそれからすぐここに来て、
バスは工場見学のあとは林間学校の宿舎に行く予定だったが、林間学校自体、その全日程が中止になった。
当然だ。
奇跡的に小学校の犠牲者は5年2組の生徒2名のみだったが、自らも火災に遭い、同級生・同期生を喪ったばかりの生徒たちに『気を取りなおして林間学校を楽しもう』とはならない。
それに、そんなことをすれば日本中から学校に『不謹慎だ』と非難が殺到する。この火事はあの工場だけでなく近隣の町全体に広がり、歴史的な大火災として報道されているから。
火は、まだ、燃えている。
現場では消防団と自衛隊による消火・救助活動が続いている。すでに大量の死者・行方不明者が出ており、その数はこれからも増え続けるだろう。
そうと知り、
そこまでの大惨事になっていたとは、自分とその周りの小さな世界を守ることで汲々としていた
「よかった、誰も死ななくて」
「いや、だから死んでいると」
「身近な人、死んでほしくない人は誰もってこと。僕たち4人はこうして生きてるし、学校の面子でも死んだのは
「リッカ……
「そうだね。ソウマくんに殴られた原因も
「まぁな」
「死ねば仏ではあるけど。僕がみんなとはぐれたの、あいつらに押されて転んだからなんだ。嫌味の1つも言いたくなるって」
「なに⁉」「「えっ⁉」」
3人が目を剥いた。
「あいつら、そこまで! ええい、俺が虎型ロボットの落下から助けてやれず殺してしまったなどと、責任を感じて損した!」
「
「うつむいて、ンなこと考えてたんかい!」
「っ、くく……」
彼らが思った以上に救う価値のないクズと分かり、
「‼」
気づかなければよかった。
だが気づいてしまった以上、確かめずににいるほうがつらい。知るのは怖いが……
「虎の、パイロットは?」
「「「パイロット?」」」
3人はきょとんとし──
「ああ、いや。虎は無人機だったと調べた人たちが言っていた。中の人などいなかった、お前は誰も殺していない。安心しろ」
「はぁ~っ。僕、当初はアレの中に人がいるかもって想定してたのに、恐怖で忘れて撃破しちゃって。今頃、思いだして。危うく人を殺すトコだったよ」
「
「な、なに⁉」
「たとえそれで人を殺しちゃってたとしても、わたし
「アタシも! アンタはヒーローでアタシたちを救ってくれて、褒められることしかしてない! 気にすんじゃないわよ!」
「~っ、ありがとう、2人とも」
「俺も、2人に同感だ」
「ありがとう、トキワ」
3人の言葉はもちろん嬉しいが、本当に殺してしまっていたら心の重荷は取れなかったろう。だから本当に助かった。
正当防衛だとは認められるだろうが、そういう問題ではない。たとえ相手が悪人だろうと自分のような一般人に──
人の命が背負えるわけ、ないのだから。
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