第7話 新しい仲間
黒島はしばらくの間、周辺の警戒に当たっていた。
周辺は完全に暗闇で、頼れるのはレーダーくらいしかない。
そんな中、周囲がパッと明るくなった。
「うぉ、まぶしっ」
そんな事を言っていると、いつの間にかレイズが戻ってきていた。
「あ、レイズさん」
「いやー、よかった。何とか黒の旗艦の制御権を奪取することに成功しました」
「ん?ということは、今はレイズさんの下に黒の旗艦が存在する……?」
「いえ、制御権自体はトランスさんに返しました。今は共に戦ってくれる仲間です」
「そう固いことを言うな」
そういって、トランスが紅の旗艦の制御室にやってくる。
「あなたがトランス・ボーダーさん?」
「そうだ。お前さんが黒島祐樹か」
「はい」
「なるほど、紅の旗艦が欲しそうな顔をしている」
「どういう顔ですか……」
「まぁいい。レイズ、俺に用があって来たんだろう?」
「はい。艦に損傷が発生したので、修理をお願いしようかと思ってたんです」
「どれどれ、診てやろう」
そういうと、紅の旗艦の周りに、黒の旗艦内部にいた小型艇がわんさかを出てくる。
「これってさっきの小型艇?」
「そうだな。さっきは小型艇が相手になっていたな」
「うっ、あれは不可抗力でして……」
「いや、いい。確かに不可抗力ではあったからな」
そういって、トランスは小型艇を動かして紅の旗艦を検診する。
「うむ、そこまで致命傷ではないが、放置してたら問題になるレベルの物だな。俺に相談しておいて正解だったようだな」
「とりあえず、すぐに修理をお願いします」
「分かった。とりあえず、このドックは使えないから、隣のドックに行くぞ。あとでここも修理しておかないとな」
その後は、艦を動かして隣のドックに移動する。
「しっかし黒の旗艦ってデカいですねぇ。一体どれだけあるんですか?」
「そうだな……。地球の長さで言うと、大体15kmはあるな」
「15km!?そんなに……」
黒島はその圧倒的な大きさに唖然とする。
「ちなみに紅の旗艦は大体955mくらいです」
「それでも十分大きいですよ……」
そうこう言っているうちに、隣のドックの前まで来た。
トランスが腕を組み、目をつむる。
すると、黒の旗艦の外殻が開き、中からロボットアームが飛び出してきた。
そして、そのロボットアームが紅の旗艦の船体をがっちりと掴む。
そのままロボットアームがドック内部に引きずり込むように、紅の旗艦を内部に収容していく。
「よし、これで問題はないはずだ。あとは検査と修理をすればいい」
「ありがとうございます、トランスさん」
「なに、これが俺の仕事なんだからな」
そういって、トランスは黒の旗艦へと戻ろうとする。
「あぁ、そうだ。一ついいことを教えておこう」
「なんです?」
「3か月後に予定してい地点ADI-61への攻撃が4時間以内に変更になった。今後もトムボール級爆弾の投下予測が変更になる可能性が高いから気を付けておけ」
「それは本当ですか!?」
レイズとトランスの会話に、黒島はさっぱりである。
「つまりどういうことですか?」
「えぇっと……。簡単に説明すると、地球のアメリカ合衆国アラスカ州アンカレッジ周辺に、以前エジプトに落としたのと同じ爆弾が投下されるということです」
「それは大変じゃないですか!」
「トランスさん、すぐに修理をお願いします!」
「言われなくてもやってるよ」
ドック内では、修理のために小型艇や無数のロボットアームが作業をこなしている。
「数時間以内で終わらせるとなると、主砲の交換と外装を綺麗な見た目にするくらいしかできないが、大丈夫か?」
「問題ありません。私の攻撃力があれば、トムボール級なんて簡単に吹き飛ばせます」
「威勢がいいな。こっちも全力で取り組ませてもらおう」
「あのー、会話の途中すいません」
黒島が申し訳なさそうに言う。
「なんだ?何か用事か?」
「いえ、非常に言いにくいんですが……、ものすごく眠いです」
それもそうだ。夜中寝ているところを叩き起こされたのだから。
「私が起こしてあげるので、寝ていてもいいですよ」
「それじゃあ失礼して……」
黒島は、座席のシートベルトを外し、そのまま宙に浮く。
無重力であるため、どこでもベッドになるのだ。
こうして眠ること数時間。
「祐樹さーん。起きてくださーい」
スマホのアラームと共に、黒島は起こされる。
「うぅん、意外と無重力って心地いいな」
「それはそうと、目標が動き出しましたよ」
「例の質量爆弾ですか?」
「えぇ。こちらは現在目標地点に向かって移動しています。叩くなら今のうちです」
「よし、では行きましょう」
黒島たちは、黒の旗艦に別れを告げ、一路アラスカ州の上空へと向かう。
「現在、光速の1%で航行中」
「これ、目的地までどれくらいですか?」
「目的地までは、あと0.5光秒ってところですかねぇ」
「……時間で言ってくれません?」
「大体50秒といったところですね」
「それだけあれば問題ないですね」
「えぇ」
そんなことを話しているときだった。
突如警報音が鳴り響く。
「な、なんです!?」
黒島は慌てて原因を探る。
すると、原因は目の前にあった。
「質量爆弾が投下……!?」
「マズいことになりましたね」
「落ち着いて言ってる場合ですか!」
「大丈夫です。こんな時にも対応できる兵装があるんです」
そういって、レイズはある物を起動させる。
「
「狙撃銃って、対象物が小さいと問題になりませんか?」
「大丈夫です。そこは私の補正力を信じてください」
そういって、ダブルバレルスパイラルスナイパーライフルを起動する。
すると、艦の上部から何か銃身のようなものがせり出してきた。
そして、それが投下中の質量爆弾に向けて照準を定める。
「祐樹さん、なるべく艦の速度を一定に保つようにお願いします」
そう言われて、黒島は速度の維持に努める。
そして、照準が定まったところで、レイズが狙撃銃の引き金を引いた。
青白い光線が螺旋状になって、直進していく。
そして、大気圏内を悠々と落下していた質量爆弾に、その光線が命中する。
それが原因か分からないが、質量爆弾は大きな爆炎を残して消えていった。
あとは残骸が散り散りになって地上に落ちることだろう。
「さて、直近の問題は解決しました。帰りましょう」
「そうですね」
黒島は、この日が学校の登校日でないことに、心から感謝していた。
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