外伝8「エープリルフール」
「ミトちゃ~~んっ!!」
私がサークルルームへ入ると開口一番ヤナエ先輩がタックル、いや、抱きついてくる。
「ちょっと聞いてよ!! この前、小説教室の人にボクのこの友人関係を赤裸々に言ったんだ。そしたら、エープリルフールはとっくに過ぎたよって言って、全然信じてくれないんだぜ」
「ちなみになんて言ったんですか?」
「そりゃあ、ボクの友達には新人マンガ家と大御所マンガ家の娘がいて、その友達は受賞式とか出て、○○とか××とか△△っていうマンガ家と会っているんだよって」
ヤナエ先輩はさらに続け、
「それに、マンガ家の2人にボクの作品も見てもらってるんだ。どうだ。すごいだろうっ!! って言っただけなんだけどなぁ」
「まぁ、『友達の親が』って絶妙に友達の友達っぽい、新しい言い回しでウソくさいですよね」
しかも、ウソの内容が有名人系っていうのも拍車をかけてるよね。
「た、確かにっ!!」
ヤナエ先輩は戦慄の表情を浮かべる。
「次からはちゃんと、知り合いの大御所マンガ家がって言うことにするよ」
それもたぶんダメな気もするけれど、放っておくことにしよう。
「そう言えば、私も似たような事があるんですけど。そうですね。えっと、アイドルの◇◇に会った! って言うじゃないですか」
「えっ! マジで!! 会ったの!?」
「って、私が母さんの娘だと知っている人にはこの手のウソが何でも信じられちゃうんですよね」
「あ~~、納得だね。普通に会ってそうだもん」
「まぁ、母さんは会った事あるみたいですよ」
「えっ!? それは本当、ウソ、どっち!?」
「さぁ、どうでしょう」
私は意味深ににっこりとほほ笑みを返した。
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