第32話「私の本棚」

「となると、次に必要なのはどんなストーリーにするかのプロットですね!」


 少し進んだことに喜びを隠しきれない様子で、2人へ声を発する。


「コメディ系の現代ファンタジーっていっても、それこそ山のように種類がありますもんね」


 私は本棚に置かれた小説&マンガからまずコメディ作品に目を向ける。


「異世界のコメディ作品は1作だけで、あとは全部現代ものなのね」


 自分でも意図していなかったが、圧倒的に現代っ子だった。


 私の視線を追うように、ヤナエ先輩といーちゃんも本棚を見る。


「趣味、良い……」


「確かに、本のラインナップが面白いものしかない! けれど、ミツバさんの作品がないのなんで?」


「母さんの作品は、母さんの部屋にまとめて陳列されてますよ。えっと、あとは――」


 私はクローゼットを開けると、キャスターのついた衣装ケースを引っ張り出す。


「これが、母さんが連載してた雑誌。他にもベッド下収納とか、床下収納とかも占領してますよ。そりゃ、ちゃんと取ってありますって!」


「……流石の量!」


「こ、これは、流石というべきなのか。連載長いと大変なんだね」


 いーちゃんとヤナエ先輩は冷や汗を浮かべる。


「まぁ、昔っからなんで、これが普通なんですが」


「なんというか、ミツバさんって捨てられない人なんだね」


「何があっても大丈夫にしているって本人は言ってますけど。だから、お菓子とかアイスとか飲み物とか、なんでもあるんですよね」


 ヤナエ先輩の顔が青ざめる。


「他にもだいたい、何を言っても『』って返してくれますね」


「そ、そう。でも流石にときわ荘の人のサインとかはないっでしょ」


 冗談でも言うように投げやりに言うヤナエ先輩。私は母さんに代わり、返事をする。


「ああ、さすがにときわ荘の人のサインは……、『あるよ』」


「マジでっ!? ちょっ!! 探しにいっていい?」


 今にも走り出しそうなヤナエ先輩を、いーちゃんが掴む。


「今は、プロットを考える時間……」


 私はウンウンと頷き、


「先輩、これが、プロとアマの違いですよ! 大人しく私のプロット手伝ってください!!」


「なぜ、ミトちゃんが上から目線なんだい」


 ヤナエ先輩は諦めて、再び着座するのだった。

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