第27話「ネタ探し」
さて、長編に挑戦する決意を示したはいいものの、いったいどんな話を書けばいいのだろう?
好きな話は現代ファンタジーとミステリー。大学のサークルで短編で書くのはホラーか、まれにコメディだ。
こういうとき、母さんはどうしているのかな?
「ねぇ、母さんは新しく何か描くときのネタってどうしてるの?」
「新しく何か描くとき? あたしの場合は依頼があったものを描くから」
そんな身も蓋もない……。
「こう、なにか新しく描こうとか思わないの?」
「ないわね。そもそも今の仕事が忙しくて、そんな暇ないのよね」
「あ~、確かに、母さんってなぜか仕事が切れないよね」
「世の中があたしを求めているのよ」
母さんはドヤ顔で言った。
「しかも、あたしがやったジャンルはだいたい流行るのよね。最初は動物ものやって、魔法少女やって、クイズ系やって、育児系描いて、最近までネコ描いて、今はグルメでしょ」
「そうなんだよね。だいたい母さんがやるジャンルって流行るんだよね」
「そうなのよね。まぁ、あたし以外の作品が、だけど」
そうなのだ。だいたいそのジャンルの出だしを引っ張り、流行ったあたりでたくさんの新人によって打ち切りに追い込まれるというのがいつものパターン。でもすぐに別の作品を描くよう求められ、次のジャンルも当たるけれど……というのを繰り返している。
ある意味ではヒットメーカーと言えなくもないのだ。
「それに、あたしが行くと飲食店とかあとからめっちゃ混むのよね」
確かに母さんと食事に行くと、そのあと混むことはあるけど。
「いや、それ時間帯か、人が入ってると安心して入りやすくなるとかの効果だから」
「他にも、あたしが応援してる役者さんはだいたい売れるし」
これは完全に思い込みね。
「うん、母さんが応援する頃にはすでに有名だから。ドラマとか映画の主演はってる時点で有名だから」
「あたしが育てたといっても過言ではないわね」
「めっちゃ過言だから!」
しみじみと言うことではないわね。
「お笑い芸人もブレイクするわね」
「あ、うん、それは凄いと思う。母さんが応援してると、お笑いで残るかはともかく売れるね」
なぜかそこは当たることが多いのよね。
「でも、他のマンガは応援してるの当らないわね」
「そこだけホント先見の明がないよね。マンガ家なのに!」
「「…………」」
「「あれ? なんの話してたっけ?」」
脱線に脱線を重ねた結果、私も母さんも元々なんの話から始めていたのか、すっかり分からなくなってしまった。
その日の夜、私はネタ探しに母さんに話かけたことを思い出したが、時すでに遅し。
旬を逃した気がして、別の方法でネタ探しをしようと心に決めたのだった。
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