第26話「長編挑戦」
「…………っ!」
好きな小説のあとがきに、小説投稿サイト『カク・ド・クハ』にて短編を載せていますというのを読み、そのサイトを訪れると、トップページにでかでかとカクドコンという文字が目に入る。
「コンテスト? そういえば投稿以外にもこういうところで小説のコンテストをやってるって聞いたことはあったけど。どんな感じなのかな?」
目当ての短編そっちのけで、応募要項に目を通す。
「へぇ、応募ジャンルごとに受賞するんだ。ジャンルは全部で6部門か。公募はよく小説の最後に応募要項書いてあるけど、だいたい1部門だよね。これがネット小説との違いかな。あとは文字数はっと、10万文字……。10万文字ってどれくらい?」
私は過去自分がサークル用に書いた短編小説を開き、文字数を確認する。
「えっと、これが一番長く書いたやつだね。たぶん、これで2~3万文字くらい行っているんじゃないかな」
しかし、左下に表示された文字数に愕然とする。
「うそ。これで6000文字なの。えっ、10万文字ってヤバくない。めっちゃ書かないといけないじゃん」
いままで短編、それも6000文字でひいこら言っているのに、果たして長編なんて書けるのだろうか?
「う、う~ん……。一応締め切りも調べておこう」
約4か月後が締め切りになっていた。
「4か月以上あれば書けるかな?」
腕を組んで、目を瞑り考える。
出来るのか、出来ないのか。やるのか、やらないのか。
考えが決まらず、目を開けるを、すでにパソコンはスリープモードに入ってしまっていた。
いやいや、パーティのときに最終選考以上を目指すと決めたじゃない!
たまたま見ることになったカク・ド・クハでちょうどコンテストの期間っていうのはきっと運命よ。
運命に従って生きるのよ。私! 普段占いとかそこそこに楽しんでるし、運命に従うべきなのよ!
やるか、やらないかは意味がない。やるのよ!
あとは、出来るか、出来ないかだけよ。
「じ、自分で、思っててあれだけど、自己暗示かけてるみたいになってるわね」
一回落ち着こう。
自信は全くない、10万文字なんて途中で挫折するかもしれない。
現実的に考えて、初の長編挑戦で最終選考までいくのは難しいだろう。
「やらない理由はたくさん出てくるわね。でも、私は大御所マンガ家の娘。隠れた才能があるかもしれないし、なにより挑戦もしないうちに諦めてたら母さんに笑われるわ。当たって砕けろの精神でやってみるわよ!」
自分で自分に宣言し、握りこぶしを作る。
ただ、最後までやりきるには、普通ではまず無理だと思うのよね。だから、あの方法しかないわね。
「我が家には母さんから伝わる創作作法があるわ。それは――」
私はそれを実行する為に母さんのいる居間へと
「母さん、私、今度、カク・ド・クハってサイトで募集してる小説のコンテストに出してみるわ!」
必殺!! 『自分追い込み』
説明しよう!
自分追い込みとは、母さんの必殺技の1つで、あえて宣言することによって、それを絶対に行うようにする技なのよ!
母さんは仕事の合間に行かなくてはならない面倒なことをするときに使っているわ。病院とか車検とかね!
自分追い込みを使った私に母さんはキョトンとしながら、
「かくどくは? ってなに?」
「あっ、そこからか。えっと、小説をネットに載せられるサイトで、そこのコンテストで受賞すると本になるの」
「ああ、投稿するってことね。へぇ、ネットで出来るなんて時代ねぇ」
「母さんのときはないからね」
「じゃあ、ミト、長編書くのね?」
私は意を決して頷く。
「それなら、どんなに自分でつまらないと思っても最後まで書きなさい! 作品を書いてると、作品つまらない病とか、別作品書きたくなる病とか発症するけど、石に噛り付いてでも完結させなさい。最後まで書いていない作品はいくら書いても成長しないわ。一発で受賞できる人なんて稀なんだから次に繋がる作品を書くのよ」
「うん。分かってるよ。前も母さん言ってたしね。でも、最近は完結してなくても書籍化する作品あるけどね……」
「そうなの? 最近のはよく分からないわね。あたしの時代だと完結してないものなんて見てすらもらえなかったわよ」
「ああ、持ち込みとか投稿って、そうだよね」
「時代ねぇ」
母さんはしみじみと呟き、
「でも、余所は余所、うちはうちよ。あんたはちゃんと完結させなさい!」
「もちろんっ!」
こうして、私は自分を追い込みつつ、長編小説に挑戦することになった。
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