第25話「血の雫」
ピシャーン!
ピシャーン!
何かが弾けるような音が外から聞こえる。
一度音がすると少しの間静寂が訪れるが、油断し始めると再び同じ音が聞こえてくる。
「ねぇ、ミト、これ、なんの音だと思う?」
居間から外の方を向きながら母さんが尋ねる。
「なにか、水が落ちてる音かな? それにしては音が大きいけど、ちょっと確かめてくるよ」
私はそう言って玄関へ行こうとすると、
「ちょっと待ったっ!」
母さんに引き留められた。
「あんた、そんな無防備に行く気? ホラー映画なら命がいくつあっても足りないわよ! あたしは、この音、血が滴っている音だと思うの。この音がし始めたのはついさっき、つまり、今外に出ると殺人鬼がいる可能性があるわ!」
「いや、ないでしょ! 仮に血の音だとしたら、なんで殺人鬼はわざわざ血が滴る位置に置くのさ」
「なら、狩人のごとく、獲物を木にぶら下げているのかも」
「うちの近くに木はないでしょ!」
「なら、電柱!」
「電柱はありえるかもしれないけどさ。そもそもただの血の雫が落ちただけでいつもと違う変な音はしないでしょ」
「むぅ、それもそうね」
母さんを論破した私はいそいそと懐中電灯を持ち、それから傘を携える。
べ、別に殺人鬼が居たとき用対策じゃないわよ。さっきまで小雨が降っていたから用心して傘を持っているだけだから!
「待ちなさいミト、母さん、別の可能性も考えたわ。ケガをした宇宙人が屋根で隠れて休んでいるというのはどうかしら。それなら血の雫が普通とは違う音を立てている説明にもなるわ! そして宇宙人なら、E・Tタイプならいいけど、エイリアン系だと危ないわよ」
「それ、さっきの狩人と大して変わってないからね!」
どうせ、雨の雫だろうと思いつつ、外へと出る。
私としては、野生動物が何かしているのではないかという想像の方がありえると思い、一応慎重に外を見回す。
「ん~? 特に何もないわね」
そう独り言を呟いた瞬間、ピシャーン! と音が響く。
音の方向に懐中電灯の明かりを向けると、そこには水に濡れた白い発砲トレー。
しばらくそれを眺めていると、水滴が上から落ちてくる。
上には雨どいがあったのだが、どうやら一部破損しているようで、たまにそこから水滴が落ちて来ていた。
「なんだ。音が大きかったのはどこかからか飛んできたトレーの所為ね」
私はトレーを外のごみ箱に捨てると家へと戻った。
「ミト、どうだった? 幽霊が一滴、二滴……九滴。一滴足りないとかしてなかった?」
「いや、してないから。雨どいが少し壊れてて、たまたま下にあったトレーに水が跳ねた音だったよ。というか母さんはよくそんなに色々ありえない事を思いつくね」
「そう、ただのトレーだったのね。まぁ、あたしクラスになると、なんでもすぐ想像して物語を考えちゃうのよね!」
「うん、それは凄いし見習いたいけど、なぜホラー縛りだったし!」
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