おい、お前ら何やってんだ
舞姫恋人騒動から二日経ちある程度は落ち着いた、それでも諦めきれない男どもが鴻上に告白しているらしいが、見事に玉砕している。
ほら、今だって男に呼び出されてる、大方告白する場所でも伝えられてるんだろ
「またお呼び出しですか?」
「はい、今日だけで五人から告白されました」
「ふーん、そんだけ人気があるって事だろ良かったな」
「ちょっとは嫉妬してくれても、いいじゃないですか」
「別にしなくていいだろ付き合ってる訳じゃないし」
「もしかしたら、私他の男の人と付き合うかもしれませんよ?」
「しないってわかってるから心配しない」
「え......あのその......それって......」
「そんなに簡単に鞍替えするなら監禁なんてしないだろ」
「そうですね......」
「なに悲しそうな顔してんだ」
「別に......」
「そうか」
俺もわかってる自分が彼女、鴻上舞が好きな事はわかっている、でもなー告白ってどうやってすればいいか分からない、あのバカに聞こうものなら笑いものにされるし、自分で考えるなんて恥ずかしくて、思考がショートして何も考えられなくなってダメだなぁ
「あの、私」
「なんだ?」
「いえ、なんでもないです......」
「相談か?いつでも話聞いてやるから」
「......はい」
鴻上はなんだろう、今日のは調子が出ていないのだろうか、いつもは言いたい事はなんでも言えるそんな人物だと思っている、でも今日のは違う何か人に言えない様なことを企んでいるのだろうか、違うな何か隠したい俺だけには言えない何か
「言えない事かそれは?」
「いえ、そういう訳じゃないですけど」
「なら、話してくれてもいいんじゃないか?」
「その......ごめんなさい!!」
鴻上は教室からどこか逃げる場所を探している様に教室を出て行った
「おーい授業サボんのか?」
「すぐに戻ってきますので!!」
確かに鴻上はすぐに戻ってきた、友達と話していて、明るく笑顔でいつもの鴻上舞と感じる、それでも、引っかかるところがある、まず目元だ心なしか目元が赤くなっている、多分泣いた痕だ、髪も今朝は綺麗なストレートだったが今は少し髪が乱れている。
確実に何かを隠している、多分自身に関する何かだ、確かに友達とは仲が良いだが、周りの女子はどうだ。あぁ......空気が重い、重いというより汚れている、鴻上舞を見る目だけが汚れている、鴻上がいるだけで教室の空気を悪くする、邪魔者、腫物、そんな目で見ている。
これだけ答えが出てるんだ誰でもわかるさ、鴻上はいじめられている。理由は簡単だ、この前の放送で鴻上へのヘイト爆発した。
鴻上は綺麗だ、十人とすれ違えば十人は二度見するだろう、鴻上の意中の相手が俺と知った連中は告白をしていった、多分「あんな、奴より俺のほうが」だろう。勿論その中には女子に人気のある生徒が何人か含まれていただろう、鴻上は全ての告白を断った。
「鷹山、ここ答えろ」
「すみません、聞いてなかったです」
「授業に集中しなさい、次やったら欠課にするからな」
「はい」
結局、どうすればいいか分からないまま授業が終わった
「おい、国東」
「なーにー?遥ちゃん」
「分かってるだろ」
「鴻上さんの事でしょ?わぁってるよー」
「なんで、鴻上がいじめられている」
「んー遥ちゃん五割、鴻上さん四割、俺ちゃん一割ってところかな」
「は?」
「実は遥ちゃんって人気あるのよね、優しいし気が利くし何よりいい感じにイケメンなところとか」
「そうか」
「んで、この前の放送で宣戦布告なんてされちゃった女の子達は怒り心頭な訳よ」
「たかが、そんなことで」
「女の子にはたかがそんな事じゃないんだよ、事実鴻上さんはそれでいじめられてる訳だし」
「どうしたら終わりになる」
「んーいじめの犯人を一発ずつ殴れば止まるんじゃないのー?」
「ふざけるのも大概に」
「結局どっちかが不幸になんないと、いじめって止まらないんだぜ」
「そんな戦争みたいな」
「ま、それかいじめの現場でも押さえたらいいんじゃないの?」
「確かにそれなら」
「でも出来るかなぁ?遥ちゃんに」
「何をだ」
「考えてもみなさいよ、遥ちゃんの事が好きであんな事まで言っちゃう子が、いじめられるのを見て遥ちゃん我慢できる?」
確かに出来るかどうかと聞かれたら我慢できずに殴るだろう
「金曜までに俺ちゃんがいじめに加担してる生徒見つけて教師に言っとくから、遥ちゃんは鴻上さんについてなよ、いじめって誰にも言えないし心細いもんだからさ」
「分かった」
「んじゃ、ジュース一本ね」
「はいはい」
「ありゃ、意外と優しい」
「流石にそれくらいする」
こいつが自分から働くなんて稀だこれくらいしてやらんとな、そんなのは建前だ本心は分からない。
俺達は外にある自販機に向かった、自販機がある場所は校舎から少し離れていて教室からも見えにくい
「んで、何飲むんだ?」
「モンスター」
「早死にするぞ」
多分俺は安心していたと思う、たった二日間それだけでいじめは悪化しない、まだ鴻上には手を出さない、悪い噂程度、一緒に帰って飯を食べて一緒に寝れば鴻上は落ち着くそう思っていた。どうしてこうも現実ってうまくいかないのだろうか。
俺達が見た鴻上は雨も降っていないのにずぶ濡れだった、俺は駆け寄って持っていたハンカチを渡し拭く事と保健室に行くように言った
「おい、お前ら何やってんだ」
「別に?」
「これ見て、別にな訳ないだろ」
「あんたには関係ないでしょ」
「流石にそれは無理でしょ」
その場にいたのは三人だ、男一人に女二人、男は今朝鴻上を呼び出した男だ女の方は見たことがない、鴻上をずぶ濡れにしたのはこの三人だ、許せないそれだけだ
「国東」
「なに?」
「殴っていいんだったよな」
「そうだね、目でも瞑っておくよ」
三人を殴った、簡単だがそれだけだ。
後で呼び出しはくらうだろう、それでも今だけは止めないでほしい、鴻上が受けた痛みはこんなもんじゃない、だから鴻上を傷つけた奴は絶対に許さない
「遥ちゃんそれくらいにしときな、それ以上は過剰防衛だよ」
「いや、鴻上が受けたのはこんなもんじゃない」
「これ以上したら遥ちゃん退学になっちゃうよ?」
「それは困る」
「俺は先生に言いに行くけどついてくる?」
「鴻上の様子を見に行く」
「分かった、一応弁明しとくから」
「頼む」
こんなのでいじめが終わった後も楽しく鴻上と学校に通えるか分からない、でも今はこれが正しいと信じるしかできない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます