いや、ここで愛を叫ぶなよ

「おいおい、遥ちゃーん」


 このまるで女の名前みたいに俺を呼んでいるのは国東大河くにさき たいが。こいつとは高校入学以来の友人だが、俺が気にしている名前が女っぽい事をわかって、ちゃん付けで呼ぶ意地の悪い奴だ


「なんか用事?」

「用事も何もないでしょー見たよー今日舞姫と一緒に学校来てるの♪しかもおてて繋いで来てるのもちゃっかり」


 舞姫ってのは鴻上さんのあだ名だ鴻上舞って名前に姫を付けただけだが、実際に姫様みたいな身なりで人に分け隔てなく接するもんで舞姫ってのが定着しだしたらしい


「殺すぞ」

「やー怖い怖い」

「で、なに?」

「遥ちゃんと舞姫が一緒に登校してるのもう学校中噂になってるよ」

「あーだろうな」

「ほら、舞姫狙ってた奴らが遥ちゃんを今にも殺そうとしてるよ?」

「てか、広めてるのお前だろ」

「あーばれちゃった?」

「そりゃ噂になるには早すぎるしな」

「俺が言ってなくても二限は校内中に広まってると思うぜ?」

「そんなの俺には関係ないだろ」

「かんけーしちゃうんだよなーこれが」

「は?」

「実は俺ちゃん裏で舞姫や遥ちゃんの事が好きな連中に相談されててさ」

「……それで?」

「しかも、ライン持ってるのよ、俺ちゃんうっかり全員に一斉送信で噂をおくちゃったのよ」

「自業自得だろ、ざまぁ」

「んで、俺ちゃんのライン只今炎上中」

「はぁ……仕方ねぇな、んで?俺にどうしろと?」

「放送で偶然って事にしてくんね?手を繋いでたのも俺の見間違いって事で」

「マック?……いやラーメンか?」

「なんでも頼んでいいから頼む!!」

「もちろんお前の奢りだよな?」

「そりゃぁモチのロン!!」

「破産させてやる」


 ピンポンパンポーン


「おい、鴻上にも言ってないよな?」

「ん?朝一で伝えておいた」

「卒業まで炎上しとけ」

「いや、何言ってんの?遥ちゃんがこんなこともあろうかとで助けてくれるんでしょ?」

「手遅れだ」


『皆さんおはようございます鴻上舞です、今ホットな噂の私と鷹山遥君が一緒に登校していた件ですが』


「ほら、舞姫が放送で今から」


『私は鷹山遥君とお付き合いしています、なので遥君を狙っていた女の子は即刻別の恋でも始めてください、遥君聞いてますかー?聞いてますよね?遥君愛してますよー!!』


「まじ?」

「そんな事より、スマホでも見て落ち着いたらどうだ?」

「あーやめとくめっちゃブルブルしてるから」

「ま、覚悟しとけ」

「はい」


 国東に珍しく勝てたので気分は最高だ


「いや待て遥ちゃんも面倒ごとに巻き込ませるからな?」

「おい、勝手に巻き込むな」

「いーや巻き込むね、巻き込む以前に渦中の人物だからな」


『え?馴れ初めですか?』


「え?まだ続くの?」

「放送委員の悪乗りか?」

「でも馴れ初め気になるかも」


 周りの生徒達がガヤガヤしてきた、そのガヤガヤ感は凄まじかった修学旅行のバスの中、文化祭当日、例をあげたらきりがない程に生徒のテンションは高まっている


「んで?実際は?どうなのよ遥ちゃん」

「付き合っていない」

「でも、舞姫は付き合ってる言ってるけど?」

「もしかしたら虚言癖でもあるのかもな」


『そうですね、私達幼馴染で、私が小学生のころに私がいじめられていたのを助けてくれたんですよ、それがかっこよくて、そこから好きになってこの学校に入学してから告白したんですよ』


「遥ちゃん」

「なんだ?」

「これマジ?」

「付き合ってる事以外マジ」

「マジンガー?」

「Z」

「そこはZEROにしとけよ」

「どっちでもいいだろ」

「良くない!!今の状況はどちらかといえばZEROの攻撃並だ」

「ゲッターにでもしとけ」

「んで、どうする?」

「は?決まってんだろサボる」

「お供しますぜ親方」

「なんだその小物」


『あ、遥君今日も一緒に寝ましょうね?』


「よし、今からお前を拘束する」

「おい、手のひらドリルか?」

「俺のドリルはお前を殺すドリルだ!!」

「おい」

「お前を今拘束せねば、俺の命が危うい!!」

「勝手に危うくなってろ!」

「いいのか?このままサボると俺と遥ちゃんは男子生徒一同から明日殺される」

「お前だけ死ね」

「嫌だ!!道連れにしてやる!!」

「分かった、放送室いくぞ」

「おーやっと俺ちゃんを助けてくれる気になったか」

「そんなところだ」


 なんで火曜の朝から疲れにゃならんのだ、取り敢えずこいつだけは助けてやらん必ず報いを受けてもらう


「あ、遥君来てくれたんですね!さっきまで一緒だったのに、もう会いたくなったんですか?」

「違う、さっきの放送に何個か追加で言うだけだ」

「そうですか、そこに国東さんがいるので、なんとなく分かりますけど」

「あぁ、このバカの尻拭いだ」

「もう、遥ちゃんったら俺ちゃんの事好きすぎ」

「きもいからやめろ、助けんぞ」

「ごめんなさい」

「土下座して許しを請うな」

「ささ、こちらのマイクで一発素敵なラップでも」

「絶対に助けてやらん」

「そんなー!!」

「ふざけてばっかりだからだろ」


 ピンポンパンポーン


『あい、さっきの放送で渦中の人となった鷹山です。えーっとさっきの放送はほとんど事実です、付き合ってる事以外事実です』

『私達付き合ってます!!』

『ちょっと静かにしてろ』

『とあるバカが可哀そうなので一応忠告等します』

『いやー持つべきものは遥ちゃんだよねー』

『俺を殺そうとする男子生徒は鴻上舞に嫌われる覚悟でしろよ』

『遥君を傷つけるのは許しません』

『と本人が言ってるので、あと国東のバカは問答無用でやっていいから』

『遥ちゃん⁉』

『以上』


 この日俺と鴻上は授業をサボって帰宅した、国東は半殺しで済んだらしい。この舞姫恋人騒動は今日の放送で決着はついたが本番はこれからだった。

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