いや、手をつないで登校は聞いてないけど

「起きてくださーい、遅刻しちゃいますよ?」

「……ん?おはよう?」

「はい、おはようございます」


 状況が呑み込めない、鴻上さんと一緒に寝て、何で向かい合ってるの?


「なんで、向かい合ってるの?」

「私にもわかりませんけど、とっても幸せです」

「それと、ごめんなさい……昨日は首を絞めようとして……」


 思い……出したッ……!!鴻上さんと話していてそれで……


「ちょっとだけ一人にしてくれないか?」

「その、謝って許される事では……ないのはわかります……でもお話くらい……」

「怒ってるとかじゃないから、大丈夫」

「うぅ……分かりました、朝ご飯作ってきますね」


 鴻上さんはそう言ってベットから出ていった……

 おい、昨日俺は何と言った何を考えていた。一緒にいてもいいって考えなかったか?それって好きって事なのか?分からないの連続だ、ここまできたら好きってなんだ?までいくぞ一旦考えるな率直な感想だけ一言で済ませよう、そうしよう


「めっちゃ恥ずかしいじゃん!!!!馬鹿野郎!!!!」


 二度寝したい……二度寝しよう。あーめっちゃいい匂いする、さっきまで鴻上さんがいた温もりがある……ちょっとくらい枕に顔をうずめても良いよな……?


「あの、今大きな声がしましたけど大丈夫ですか!?」


 あー終わった好いてくれてるとはいえこれは終わった、流石に引くよこれは


「ふふ」


 ほら、笑っちゃってるじゃんこれ嘲笑ってるやつだよ


「そんな事しなくても私がギューってしてあげますよ」


 はい?今なんて……うわぁーあったけぇーなんだこれ……


「ギューギュー、どうですか?」

「いや、えっと……おはよう?」

「二度寝にしては早い目覚めですね、えらいえらい」


 なんで、頭撫でてるの?ママ味出しすぎじゃない?三度寝するよ?


「寝ちゃダメですよ?朝ご飯冷めちゃいますから」

「ん、分かった」


 結局、机まで手を引っ張られて机まで来ちゃったよ


「今日は一人で食べれるから……」

「えらいですよー」

「昨日と態度違いすぎない?」

「そうですか?まぁ、吐き出したいもの全部吐き出せましたから」

「あぁ、そうなのね」

「これからは、もっと甘やかしていって好きにさせますから」

「あーうん、がんばってね?」

「どうして、他人事なんですか!?」


 どうしてってそんな事しなくてもいいからに決まってるからでしょ


「お腹空いた」

「また、話を変えましたね、私もお腹空いてるから、今もってきますね」


 鴻上さんが持ってきたのはトーストに目玉焼きスープと漫画的な朝ご飯だ


「いただきます」

「はい、どうぞ」


 めっちゃ見てくるじゃん、正面だし見られるのはしょうがないよ?それにしても見すぎだよ


「そんなに見られると食べれん」

「そうですよね……私学校に行く準備してきます」

「いや、そこまで、もう着替えに行ってるし」


 さっさと食べて準備をしよう……って教科書も服もないしどうやって準備するんだよ


「はい!遥君の服や教科書を持ってきてますよ」

「なんで持ってんだよ」

「昨日遥君が起きる前に鍵を拝借して家に行きました」

「親はどうした」

「いらっしゃいませんよね」

「まぁ、家の場所もばれてたらわかってるよな」


 そう、俺も両親はいない死んだとかではなく蒸発した。蒸発してからは近くの母方の祖父母の家にいた、その二人も他界し遺産などで生活している。鴻上さんと似たような境遇だ


「なので、服や教科書を持ってきました」


 俺たちが通っている清風館高校は制服がなく私服登校で授業時間は90分間、単位制で大学とそんなに変らない一応六年目まで在校はできるがそんな生徒はほとんど居ない


「ご馳走様でした」

「お粗末さまです」

「それじゃあ、行きましょうか」

「うい」

「むぅー」

「なに?」

「もういいです」

「だから何?」


 あきれたような顔すんなよ悪い事したみたいになるだろ


「今日お気に入りの洋服なんですよ?」

「似合ってるな」

「そうですか?」


 確かに似合ってるオータムファッションっぽい、落ち着きのある色のカットソーのうえにデニムのジャケットに黒のロングスカートで纏めている。普通に可愛いから何を着ていても可愛さが増すだけで心臓に良くない


「そういう、遥君も似合ってますよ」


 野郎のファッションなんて興味ないからカット!!


「いってきます」

「あ、まってください」

「今度はなに?」

「いってらっしゃい」


 いや、可愛すぎんか?めっちゃ笑顔だしさぁ!!ホントにもうやめて……心臓爆発しちゃいそうだから


「うん……」

「はい、今度は私の番ですよ」

「なに、俺もやんの?」

「はい!!早くしてください遅刻しちゃいますよ?」

「あーいってらっしゃい」

「いってきます」


 だから、めっちゃ幸せそうな笑顔やめてくんね?可愛いから


「はい」

「その手は何?」

「手繋いでいきましょ?」

「はいはい、ほれ」

「それじゃあ行きましょうか」


 鴻上さん曰くここから二十分程で学校に着くらしい


「遥君も態度変りましたよね」

「別に猫くらいかぶるだろ」

「確かに私も遥君以外と話すときは猫をかぶりますね」

「そんな感じだ」

「好きな人の新しい一面なので嬉しいですけどね」


 もう本気じゃん、完全に落としに来てるじゃん


「てか、ここ俺の家と反対方向だろ?良く荷物とか取りに行けたな」

「まぁ、そこは愛の力とかではなくタクシーの運転手さんのおかげですけど」

「いくら掛かった」

「いいですよ私が勝手にしたことなので」

「冷静に考えたが監禁犯になぜ金を払わねばいかんのだ?」

「そうでした、私遥君を監禁していたんでした」

「お互いに忘れてたら意味無いから、今日は自分の家に帰るな」

「じゃあ、遥君の家に泊まりますね」

「なんでそうなる」

「一応監禁しているので」

「もうよくないか?」

「一週間は監禁されるって約束しましたよね?約束破るんですか?」

「学校に行ってる時点で監禁も何もないだろ」

「なら、お試し同棲ということで」

「付き合ってすらいないだろ」

「どうせ今年中には付き合う事になるので」

「おい、今11月だぞ」

「あの部屋も今月いっぱいで解約する手はずになっているので」

「は?」

「さて、そろそろ学校ですよ?」

「は?え?待って」

「はい?なんですか?」

「家どうすんのよ」

「そうですね遥君のお家にでもお世話になりましょうか、合鍵がありますし」

「犯罪だろそれ」

「そのころには恋人ですよ」

「なるって言ってないだろ」

「今学校の近くですよ?」

「は?そうだな」

「手繋いでますよね?」

「そうだな」

「学校の美少女と手をつないで登校なんて噂になりますよね?」

「そういう事か」

「それに、今泣いたら遥君に悪い噂たっちゃいますよ?」

「腹黒かよ」

「恋する女の子は無敵で素敵なんですよ」


 いや、知らんしでもまぁ外壁から埋めるのは悪い気分じゃないな、確かにこんな気分にさせるんだ恋する乙女は無敵で素敵ってのは本当らしい。

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