第7話世界の連結(2)
祠の扉が開いて、祠の中を覗くと、唯は優にある疑問をぶつけた。 「彼女達は何者なのか」と。
優は答える。「大切な「人」だ」と。
「優。やっぱり貴方、あの娘達がどの様な存在かまだ理解できていない様ね?」
「これでも分かっているつもりさ!彼女達は僕の恩人で、大切な人だって事を!」
2人の声が地下に響き渡る。
「取り敢えず!この祠に入りなさい。そうすれば彼女達がどの様な存在なのかが判る筈よ。」
「分かったよ。というか、何なの?!この地下空間!!家の下にこんなのがあるなんて聞いてないし知らないよ!!」
「えぇ。教えてないもの」
優から聞かれた質問に対し、唯の答えは意を返さず。その態度は、驚く表情を見て喜ぶ子供の様だった。 そんな会話をし始めながら唯はある作業を始めていた。
「優、貴方はこれから2つの選択肢の1つを掴まなければならないの。これは貴方だけの物語、貴方の未来は、貴方自身で獲得しなければならないわ」
「は?何の話をしてるのさ、母さん。何の話をしているか分からないんだけれども?」
唯は優に対し、意味不明な話を話始めている。同時進行で着々と作業が進んでいる様で、ナットやボルトをガチャガチャと締めたり、緩めたり。何かを加工している様な音も聞こえ始める。
優は何の話をしているか分からずに話を聞き流しながら、彼女達について考えていた。
そんな優を横目に見ながらも、唯は話を続けながら作業を進める。
「まぁ聞いて。まず1つ目の選択肢は、彼女達との契約を破棄して、今まで通りの日常を過す。至って真っ当な選択肢。そして2つ目の選択肢は、ーっ」
唯はそれを話すのを躊躇う。
「2つ目の選択肢は何なのさ!母さん。はやく話してよ!気になるじゃないか!そんなタメられたらさ!」
優は唯の表情が強張っているのを見て、唯が2つ目の選択肢を話す事を躊躇しているのを本能的に察した。
唯はこの地獄の様な選択肢を自分の息子には話したくは無かった。 叶うならば、この時が未来永劫来ない事がどれ程幸福だっただろうかと、唯は考える。
しかし、その絶望が目の前の現実に起きてしまったのだ。
話さなければならない。この子の未来はこの子自身が決める事。この子の未来は私のモノでは無いのだから。例え、選び抜いた道に地獄しか無いとしても。
そう思った後。心の奥底に蔵い込み、哀しみを押し殺しながら唯は、優に伝える。
例え、その選択をした後に自分が憾まれる事になろうとも。
「2つ目の選択肢は貴方の「全て」を捨てて、世界の一部。則ち、「無空の彼方」に至る事。」
「は?何だよそれ!?そもそも「全て」って何処までなのさ!?」
「「全て」は「全て」よ。簡単に言えば、貴方の「存在感」よ。貴方を貴方たらしめる証明が必要でしょう?それを薄くするだけよ」
「その「存在感」が無くなると、僕を「僕」と認識してくれる人はどの程度の人数になるのさ?」
「私達家族がギリギリ憶えてるのが精一杯ね。けど、貴方にはまだ考える時間があるの」
そう会話を続けながら唯はある作業を行っていた。その作業が終わったらしく、多少出ていた金属音が鳴り止んだ。
「出来たわよ。この機械を使って貴方に、今までの[優]の記憶を繋げるわ」
そう言った唯の前に現れたのは、金属製の椅子に頭に被せる調理器具のボウルのような物がついた謎の機械だった。
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