Φ3話無辜の怪物

そして時が経ち、彼女達は人間を「辞めた」。

否、人間では「無くなった」と述べた方が正しいだろう。

彼女達の身体は人間を凌駕した代わりに、人間としての機能を殆ど失ったのである。

彼女達は「永遠」を求めた。

彼女達の心の安らぎであり、彼女達を人間たらしめた恩人である少年と共に歩む事を望んで。

しかし、彼女達はいかんせん人間の身体では限界。詰まりは「死」と言う終着点がある事に気がついた。

ならば、「身体が人間でなければ良い。」と彼女達は考えついたのである。

身体は機械で構成し、「心」または、「感情」だけを残して彼女達自身が己が身体に改造を施したのである。

その結果、彼女達は識別するための性別と「心」を残し、その他の機能は機械で補う存在。[アーティファクト]となった。

性別を残したのは愛する少年への配慮と、世界への憎悪の塊をしたIFの象徴である。

彼女達は少年の為にその手を汚した。

純粋無垢だったその手は赤黒く染まり、見る影さえも残っていなかった。


その光景を見ていた誰かが云った。

「曰く、氷の様に硬く、冷たく。

曰く、花の様に可憐。

曰く、焔の様に悠々しく。

曰く、劔の様に殺伐としていて妖艶。

ー曰く、「絡炎の花」」と。

そして、その中の1人の少女が開口し世界に叫ぶ。

「我が!我々こそが!!この世界で産まれた無辜の怪物の成れの果てである!!!」と。

しばらく時が経ち、少年だった彼が青年になったある日。

青年は彼女達に眠りを与えた。

「願わくば、その力を幸福の為に振るう様に」と。

青年は願う。「もしも、次世代に私の様な異端者が現れるのならば、彼女達をこの地獄から救い出してくれ」と。

聖典書「絶」最終章[絡炎の花と放浪者]より。

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