第3話生まれ換わる世界(3)
男はオーブから発した光りに目を潰されて地面に転がっていた。
僕はと言うとこの光景に驚きを隠せなかった。
光り輝いたオーブの中にいた2人の少女が僕の目前に現れたのだ。
少女達は、各々で男に軽蔑する様な目付きで
見下した後に僕の方を向いた。
「大丈夫!?優!何処か怪我して無い?」
「優!!流血してない!?痛くない?」
と心配してくれた。
僕は戸惑いながら「だ、大丈夫。何処も怪我して無いから」と答えた。
そんな会話をしている間に男の目は治っていて
右手に禍々しい気配を漂わすオーブを手に叫んでいた。男が「ウルフ!!あの子供を殺してオーブを奪え!!」そう叫んだ瞬間、僕のオーブみたいに闇を発して砕けた。
そして禍々しい瘴気から黒い狼が形創られる。
狼はただひたすらに主人の命令に従うべく、目線の先の獲物に目を血走らせる。
その姿は業を背負う咎人の様に荒々しく、世の理から外れた漆黒に染まっていた。
そんな狼を見て、少女達は「よくも私達の優にそんな幼稚なモノを向けれるわね。」
「そんな犬程度で優を倒せると思ったのか解からない。」と男を貶す様な態度を取る。
男は少女達の言葉に苛立ちと憎悪を覚えただろう。
そしてどす黒い殺意も込み上げてきただろう。
男は自らの手で呼び出した下僕に命令を完遂させる様に指示を出す。
狼は主人から受けた命令を理解し行動に移した。 獲物を捕食する為にあるであろうその牙は、外見からは想像出来ない程の純白さを見せた。
自らが刃であるという認識を持ち、標的を一太刀で殺すイメージで狼は僕目掛けて突進して来る。
牙が通る範囲に入ると狼は、必殺の一太刀を浴びせるかの様に飛びかかって来た。
その刹那、銀髪の少女が僕の前に立ちはだかり何らかの技を使いその一撃を受け止めた。
そのあとに金髪の少女が光り輝く槍を狼の脇腹に深々と突き刺した。
狼は槍の一撃で消滅し、黒いオーブがコロコロと音を立てて地面を転がっていた。
路傍の石の様に成り果てた自分のオーブを見た男は、「聞いて無い!あんなに強力なオーブだなんて聞いて無いぞ!嫌だ、まだ死にたく無い!」
そう言った後に怯えながら後退りをしてその場から姿を消した。
僕は男を視界に捉えていたが、その男が段々と 分裂していく様に増えていく。
頭がクラクラして来た。
このままだと意識がもたない。
意識が途切れる寸前で僕は少女達に声を掛けた。
「君達は一体何者なんだ?」
僕は男の逃げる姿を目撃したその後に意識が途切れた。
2人の少女は答えを聞くはずだった少年が、倒れていることに気づく。
少女達は少年を何らかの力を行使して宙を浮かせながら答える。
「ー私達は[魔法の花]よ。貴方の為だけに咲く、決して枯れる事も、手折れる事もない[魔法の花]。ただそれだけ。」と。
何処か寂しそうな表情をしながらただ一言。
その一言を答えた。
そして、その声は夜風に帰した。
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