第19話 突然の雨
放課後に昇降口で彩愛先輩と落ち合い、いざ学校を出ようとした矢先に雨が降り始めた。
私はカバンから折り畳み傘を取り出して広げ、彩愛先輩に体を寄せる。
暑苦しいからあんまり密着したくないけど、傘が一本しかないのだから仕方がない。
「彩愛先輩、もっと寄ってください」
「分かってるわよ」
体をくっつけ、歩調を合わせて家路を進む。
学校と家のちょうど中間地点に差し掛かったぐらいで本降りになり、傘からはみ出している部分が容赦なくずぶ濡れになる。
「どうせ降るなら、帰った後にしてほしかったわね」
「みんなそう思ってますよ」
他愛ないことを話しつつ、傘の位置を彩愛先輩の方へずらす。
けっこうな土砂降りだから完全には防げないけど、これなら彩愛先輩の肩までカバーできているはずだ。
「六限目に体育があったんだけど、あたし汗臭くない?」
「大丈夫ですよ。密室ならともかく、外だからそれほど気になりません」
というか、むしろ石鹸のいい匂いがする。
調子に乗られると厄介だから言わないけど。
「ふーん。じゃあ、もうちょっと密着しても問題ないわね」
言うが早いか、彩愛先輩は私の腰を抱き、二人三脚でも始めるかのようにピッタリとくっつく。
「急にどうしたんですか?」
「これなら少しはマシでしょ。あたしが濡れないように気遣ってくれるのは嬉しいけど、それで歌恋が濡れたら意味ないわ」
「き、気付いてたんですね」
「当然よ。こんな大雨なのに、ほとんど濡れないんだから」
なるほど、言われてみれば確かにそうだ。
「帰ったらお風呂沸かしますけど、一緒に入りますか?」
「そうね、ついでに背中も流してもらおうかしら」
「いいですよ、たわしでゴシゴシ擦ってあげます」
「想像するだけで痛いんだけど!?」
軽い冗談を言って先輩をからかっている間に、私たちの家が見えてきた。
ずっと密着していたおかげか、雨に降られて体が冷えているはずなのに、寒さはそれほど感じない。
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