第18話 草むしりで汗だくに③

 シャツを着替えてから犬山家の庭に再集合し、後半戦が始まった。


 彩愛先輩には私の目の前でブラを着けてもらったので、再び汗だくになってシャツが透けたとしても、先端が見える心配はない。



「よーし、張り切って終わらせるわよ!」



 気合のこもった言葉に、私も「はい!」と元気よく答える。


 先ほどと同様、お互いに庭の両端で中腰になり、競うようにせっせと手を動かす。



「ふと思ったんだけど、歌恋って足元ちゃんと見えてないのよね?」



「そうですね」



 真下を見ようとすれば胸に視界を遮られてしまうので、正面より少し下ぐらいに視線を向け、手を伸ばして作業している。



「さっき確認した感じだと大丈夫そうだけど、窪みとか石とかに気を付けなさい」



「え……? は、はい、分かりました。あの……あ、ありがとうございます」



 彩愛先輩の気遣いを受け、ちょっと驚きつつも心が温かくなる。


 照れ臭いけど、お礼ぐらいは素直に言っておかないと。



「べ、別にあんたの身を案じたわけじゃないわよ? あたしはただ、対等に勝負したいだけなんだから。終わった後で転んだとかケガしたとかって言い訳されても困るし」



「はいはい、分かってますよ」



 彩愛先輩が本当に優しい人だということは、私が一番よく分かっている。



「分かってるならいいのよ。あっ、そうだ。あんたの場合、その無駄にでかい胸が揺れた反動で転ぶ可能性もあるんじゃないかしら」



 照れ隠しだと思うとかわいいけど、それでもやっぱりムカつく。



「顔面かみぞおち、どっちがいいですか?」



「いい度胸じゃない。このあたしが易々と急所を殴らせるとでも?」



「「――っ!」」


***


 殴り合いのケンカというイレギュラーが起こりつつも、予想していた通り昼過ぎに草むしりを終えることができた。


 抜いた雑草を一ヶ所に集め、軍手を外し、縁側に腰を下ろす。



「また汗だくになっちゃいましたね」



「結局着替えるんだから、ノーブラのままでもよかったじゃない」



「ダメです。ところで彩愛先輩、この後どうしますか?」



「とりあえずはシャワーを浴びるとして、ご飯でも食べに行く?」



「いいですね、賛成です」



 話がまとまったところで、私たちは一旦解散した。


 シャワーを浴びて身支度を整え、家の前で待ち合わせる。


 お腹を空かして町中へ出たものの、休日ということでどこも混雑していて、食材を買って家で作ることに。


 労働の後だからか、二人で作ったハンバーグは格別のおいしさだった。




 ……ちなみに、きちんと彩愛先輩に教えてもらいながら作ったので、私が手掛けたハンバーグから異臭がするなんて事態には陥らずに済んだ。

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