06_ストレス、それは燃料

 ずっと書いていたいと思うから、仕事に掛けている時間を邪魔に感じることも、億劫に感じることも多い。これは私でなくとも文字書きをしている人であれば、万人とまでは言わないが、多くの方に分かってもらえるだろう。しかし何だかんだ言って、私はこの先も仕事を辞めることは無いと思う。宝くじ当選など、一生遊んで暮らせるだけのお金が手に入ったとしても、仕事を辞めるつもりは全く無い。

 本業についてやり甲斐は少なからず感じている。必要とされることも好きだし、色んな責任もある。でもそれが理由ではない。生きている上で、ストレスを完全に失くすことは不可能だと私は思う。仕事をしていれば嫌なことは無限に湧いてくるし、嫌な奴にも次から次へと出会うし、理不尽を言われるだなんて毎日のことだ。セクハラも、申し訳ないがゼロではない。弊社はそれでもかなり気を遣ってくれているので他の会社に比べれば無いと言ってもいいかもしれないけれど、やっぱりゼロにはならない。弊社には私以外に女が居ないのだ。どれだけ必死に気を遣ってくれても、他社や顧客からその点についてあれこれ言われることもあれば、弊社の人間でも、男性では気付けない部分が出て来てしまう。女性が多い厄介も多くあるだろうけれど、自分だけしか居ないという面倒もそれなりに存在する。話が逸れてしまったが、とにかく、『仕事を辞めるつもりは無い』と言い切る私にも、仕事のストレスというのは挙げればキリがないほどにある。

 ただ、私生活に生じる面倒やストレスに比べれば、私にとって仕事のストレスは健全だ。お金を稼ぐという見返りの為に受けるストレスはまだ理由が感じられる。一円にもならない場合もあるが、将来的に仕事に繋がるなら先行投資とも思える。実際私はそのような考え方で働き続けた結果きちんと職場で認められ、それなりの収入と待遇を得ているのもまた、この考えの元となっているのだろう。私生活で受けるストレスは九分九厘が他者からのただの搾取なのでまとめて消え去ってほしいのだけど、主題と関わらないのでこの件は置いておこう。

 そして仕事のストレスは私にとって、文字書きの燃料になっている気がしている。明確な因果関係が分かっているわけではないものの、長期休暇と、仕事に追われている平日の業後とを比べた時、後者の方が筆は乗っているように思うのだ。進んだ文字数だけでは物語の進み具合はどうにも測ることが出来ない為、本当に感覚的なものだけれど。

 書きたくてしょうがないという衝動を抱える私にも、「書けない時間」は必要なのだ。嫌だけど、「あれ書きたい」「これ書きたい」「早く定時になれ」と念じているストレスは、解放された時の燃料となっている。頑張ったご褒美のようなものだろうか。沢山運動をして汗を流した後に食べるご飯のようでもある。ストレスを感じ、少し我慢してから書く文字の楽しさと言ったら。依存症と言いたくなるほどの衝動なので、我慢には限度があるものの、『適度』の我慢は、やはり必要と思えてならない。また、仕事は良いリフレッシュにもなっている。違うことに集中して、違うことに疲れて、人と沢山話して。嫌なことは多いが、物語に偏っていた神経がリセットされて、改めて物語を見つめ直した時、より良く出来る方法を思い付くこともある。

 そろそろ気付いていらっしゃるだろうと思うが、思考の全て、行動の全て、理由の全てが『文字書き』になっている。仕事は辞めない、何故ならその方が文字は捗るから。仕事の時間は必要だ。文字書きの良い気分転換となるから。これら全て私の本心であり、私は文字書きという時間を楽しく過ごすことを理由に生活している。仕事にはやり甲斐を感じているが、文字書きには生き甲斐を感じているのだ。やはり私は文字書きという趣味に出会えて本当に良かった。このエッセイは時々苦労しながらもそんな幸せな趣味を持った私の幸せな日々を語るものであり、深刻な話ではないと胸を張って言うことが出来る。よって、治療を勧めようか悩みながら読んでいらっしゃる方は一旦踏み止まって頂けると嬉しい。

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