05_いつからこうなってしまったのか
私の『文字書き依存症』はいつから始まったものなのだろうか。明確には自覚していない。ただ、この趣味を得て、年月が経つごとに酷くなっている気がする、という、少々怖いことに気付いてしまった。これ以上酷くなられると、流石に生活が成り立たない気がしてならない。その場合は、やはり、何かしらの治療を受けるべきなのだろう。考えておくこととする。しかし治療についてはやはりエッセイの主題とは外れ、やや深刻な雰囲気になってしまうので避けておこう。
さて自分の過去を辿ろうと思ったのだが、存外、難しいことだと気付いた。長くなる。その為詳細は大きく省こう。まず切っ掛けは、小学生の頃、兄や周りの友人が漫画を描いて遊んでいたので、仲間に入りたかった。漫画を描きたかったわけではない。一緒に遊びたかったのだ。当時はそんな愛らしい思考を持ち合わせていた。ただ、おそらく彼らと比べて私の中から出てくる物語は長かった。そして数が多かった。片鱗である。その為、漫画にする前にプロットとして文字でメモを取った。これが始まりだった。
何故これを始まりと断言するかと言うと、漫画のプロットであるのに、気付けば私は台詞よりも地の文を何度も書き直していたからだ。形容詞を入れ替えたり、表現を少し変えたり、言葉尻を整えたりした。そうしてから、「いや此処に拘る必要は無いよな、漫画にするまでのメモなんだから」と気付いて止める。どう考えてももう始まってしまっているのである。
此処から記憶が大きく飛ぶ。私はこの後、大学生に至るまで、文字書きに関して一切の記憶が無い。続けていたのか、続けていなかったのかを、まるで覚えていない。物語を書き出すノートがあった記憶が微かにあるものの、それが小学生時代だけのものだったのか、中学生になっても続けていたのかが記憶に無い。ただ、高校生の時には自分専用のパソコンがあった為、その時点でもうノートは役割を終えていたことだろう。そして大学生の時の記憶。私はある夜、物語を書き出していた。「久しぶりに書いてみよう」と思った記憶が無いので、やっぱり私はずっとこんなことを続けていたのかもしれない。とにかく、物語をワードに打ち込んでいた。そして、気付いたら外が明るくなっていた。その日も朝から講義があったのに、気付いたら朝になっていたのだ。ふと視線を移した時、窓の外が明るくて「えっ」と言ったことだけを、やけに鮮明に覚えている。書いていた物語の中身のことは少しも覚えていない。
その頃から、今ほど多くないものの、定期的に物語を書いていた。しかし外に出すことは無かった。インターネットは当時からもう広く使用されており、使用時間で請求額が跳ね上がることも無く、定額で使いたい放題だった。それでも私は、ネット小説を読むことはあっても、自分の物を出すことは無いままに月日が過ぎた。誰かに読んでもらいたいという欲が私の中には芽生えなかった。一つの話を作り上げようと努力していることが好きで、それが幸せだった。思い返すほど、片鱗である。
それが今のように物語を公開するようになったのは、二次創作が原因だ。詳細は省くが、大学生時代、私に『二次創作』という概念を教えた子が居た。「なにそれ?」と言う私に、「作者が書いてるわけじゃないんだけど、サイドストーリーみたいで、私は結構好きなんだよね」と柔らかな表現で勧めてきたのだ。策士だと思うが、今はもう彼女との付き合いは無い。今でも読み手または書き手として二次創作を愛しているのかどうかも、何も分からない。何にせよ当初は「こんなものがあるんだ」で留まっていたところ、とあるRPGにハマったことを切っ掛けに私は坂を転げ落ちた。登場キャラクター達のその後を描いている二次創作を読み漁った末、「私が思い描くこの子達の未来はどれとも違う」と思った。良くないルートを踏んだのである。オタクの始まりだった。結局それを書き上げ、インターネットの海に流したのが最初だ。「こんな続きもどう?」という気持ちで、この時ばかりは「読んでくれる誰か」を求める気持ちが少しあった。結果、多くの一次創作をしていたにも関わらず、外に出したのは二次創作が最初だったのだ。これが、二〇一〇年十二月のこと。つまり、ちょうど十年前に私は文字書きとなった。
そして今更、自分で当時書いていたものを確認して驚いているが、一話ごとの文字数こそ少ないものの、最初に二次創作をした一本のゲームだけで、私は短編も含めて約四百話を書いている。世間一般を知らないので多いか少ないかは分からないが、私個人の感想としては、「狂い方が爆発的だ」と思う。ちなみにその四百話の合計文字数は五十六万程度だ。
とにかくこのように段階を経て文字書きとなった私だけれど、一次創作は結局、去年の八月、カクヨムに公開したのが最初になる。あれから一年と三か月。文字数を数えることは控えようと思う。気になる方は私の小説一覧でも見てもらえればいいだろう。ただ特に気にすることではないとだけ、一言添えておきたい。
今までの経緯をこれで一通りざっくり語ったわけだけれど、結局『いつから』だと思われただろうか。私は正直、分からないというのが結論だ。始まりからだったようにも思うし、大学生の時だったようにも思うし、文字書きとなった十年前だった気もする。
始まりなんて、どうでもいいことのように思えてきた。そんなことよりも今は、見付けてしまった『大学生の時に書いた物語が入ったフロッピーディスク』の中身を、確認するかどうかということで、もう頭がいっぱいだ。
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