傾向と対策は頭の片隅に置きながらも無視すべし

 傾向と対策。

 新人賞においては、イヤな言葉(私にとっては)です。

 明らかなカテゴリーエラー、たとえばミステリーの新人賞なのに謎解き要素のない恋愛小説を送りつけるなどは問題ですが、過去の受賞作品を研究して、似たようなものを送るのは、かえって受賞から遠ざかる気がします。

 新人賞に求められているのは、新しさ。

 これは一つの真理だと思います。

 一時期の某賞なんかは「ちょっと変わった職業の主人公を通して知らない業界の話をレクチャーしてくれる」傾向、いわゆる「おベンキョミステリー」的な要素があるものがもてはやされる流れがあったように思いますから「傾向なんてない」とも言いにくいのですが。

 正直に言えば、各賞に傾向らしきものはある、が持論です。ただ傾向に寄せれば獲れるというわけではない、まで含めての考えです。

 時代の流れや、賞の理念(性質)など様々な要素が絡み合って結果として、傾向らしきものが生まれる、と感じています。

 こんな面白いものを見つけて、それなりに(でも、コストを負担するに値する)形にできる人なんだな、と作品を通して匂わせられないと、受賞は厳しいのかな、と思います。

 少なくとも「はいはい、この賞はこんなのがウケるんですよね、どーですかこーゆーの」程度で寄せても獲れない、獲ってほしくないというのが本音です。

 かといって、自分が面白いと信じるものを純粋にぶつけても、結局、選ぶ、価値を決めるのは他人。

 コントロールできない他人をどうこうすることより、少しでも作品をよくする(自分のものさし) しか私(たち)にできることはないのでしょうが。

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