必要な情報が提示されているかチェックすべし

 本格の定義は難しく、ここでは深く踏み込みませんが、仮に「読者にも論理的な謎解きが可能なミステリー」を「本格ミステリ」として話を進めます。

 鮎川哲也賞の対象は「本格ミステリ」、ただのミステリーや、ミステリー要素を絡めた小説ではないのです。

 となれば、内容も「読者にも論理的な謎解きが可能」である必要があります。

 作り手はああでもないこうでもない、どんな手がかりをばらまけるか、犯人特定のロジックに隙はないか、と通常のミステリー以上に頭を使うでしょう(少なくとも私はそうです)。

 アイデアからプロットが形になるまでも時間がかかり、そのプロットが効果的かでまた悩み、謎解きが成立するか何度も確認することになります。

 ここに待ち受ける落とし穴が一つ。

 作者は嫌になるほどアイデアを転がして、たくさんの情報が脳味噌に焼きつくほどなのですが、必要なデータがきちんと書いてあるかはまた別の問題なのです。

 いや、そんな馬鹿なことはしないというかたはよいのですが、私の場合、推敲しながら「この推理の手がかり書いたっけ」と原稿を行きつ戻りつチェックすることばかり。

 通常の倍以上、三倍、いや五倍近く推敲に時間を要しました。

 本格ミステリの場合、推敲にかける予定時間は大目にとるか、手がかりのチェックリストを準備して書きながら確認していき、初稿の段階で安心できるようにしておくほうがよいでしょう。

 今回はリストをつくらなかったので、ひどく手間がかかりました。

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