Day30 塔

 その塔は、世界の果てに聳えている。


 きて帰らぬ最果ての島。

 すべての思い出が辿り着く場所。

 そこは――まさしく世界の果てだった。


 果てなき海と終わりなき空、その狭間にぽつんと浮かぶ島。

 泡沫の世界群から切り離された、隔絶された時空間。

 現実と交わらない座標軸。進まない時。永遠に繰り返される朝と夜。

 果てなき世界の、果ての果て。

 そんな最果ての島には、白亜の塔が建っている。

 

 塔に住まうは古き神。

 いくつもの世界を粉々に砕き、いくつもの可能性を棄てた神。

 創造と破壊の力を手放し、自ら幽閉を望んだ神は、今日も暇を持て余している。

 海岸線を彷徨き回り、時折流れ着く不思議な物を矯めつ眇めつしては、手放すしかなかった世界じゆうに思いを馳せる。

 それが己に課された罰だと、分かっているからこそ。

 神は今日も、罪滅ぼしのために暇を持て余す。


「……というわけで、不思議な物が手に入ったから近々届けに行くよ」

『古き神とやらは幽閉されてるんじゃないのかい』

「自身の《影》を使って外に出る分にはルール違反じゃないだろう?」

『いい加減な制約だなあ』

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十一月の物語 Novelber 2020 小田島静流 @seeds_starlite

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