Day23 ささくれ

 仕事に疲れた日は馴染みの樹上喫茶に寄って、お気に入りの紅茶とケーキを注文する。

 夜だけ営業している、隠れ家のようなお店。星屑角灯の淡い光に満たされた店内は、まるで深海にいるようで。

 最近導入したという珈琲サイフォンの、こぽこぽという沸騰音が、なんとも耳に心地よい。

「はい、お待ちどうさん」

 丁寧に淹れられた紅茶とつやつやの苺タルト。

 深い香りと芳醇な味わい、そしてタルトのほどよい酸味と甘みが、ささくれた心を癒やしてくれる。

 これぞまさに、大人の特権。深夜の贅沢だ。

「通ってくれるのは嬉しいが、残業もほどほどにな」

「はあい」

 老店主の言葉が耳に痛いけれど、それも含めて、至福のひとときなのだ。

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