Day24 額縁

 不思議な額縁を手に入れた。

 普段はつるんとした無垢のフレームだが、中に絵画をセットすると、その作品に合った柄が浮かび上がるのだ。

 木漏れ日の森を描いた水彩画を入れれば、木の実を探す栗鼠の姿に。

 果物の盛り合わせが描かれた静物画を入れれば、生い茂る果樹に。 

 木炭で描かれた踊り子のスケッチを入れれば、優雅に絡み合うサテンのリボンに。

 その絵が一番引き立つ柄を選んでくれるのだから、便利なことこの上ない。

 画廊にあった絵を一通り試したところで、ふと思い立って、長らく死蔵されていた一枚の絵をセットしてみた。

 真っ青に塗り潰された絵は、早世した抽象画家のアトリエから発見されたものだ。

 何を描いたのかも、題名さえも残されていなかったから、これは単に失敗作を塗り潰しただけだと思われていた。

 しかし、再利用するつもりなら、通常は白く塗り潰す。そこをあえて青一色で塗りつぶしたのだから、何らかの意味があるのではないだろうか。

「さあ、君はこの絵に、どのようなものを見出す?」


 翌朝。

 額縁に現れていたのは、大空をかける燕の姿。

「そうか。これは『空』だったのだね」

 きっとそれは、病床に伏した画家が恋い焦がれたもの。

「題名は『開放』、かな」

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