Day22 遙かな

 故郷の村を飛び出したのは、十五歳の誕生日を控えた春だった。

 村の外は危険がいっぱいだとさんざん脅かされていたけれど、そんなものは怖くなかった。

 必死に貯めた小遣いと好奇心だけをポケットに詰め込んで、広い世界に飛び出した。


 あちこちの街を巡り、沢山の経験を積んだ。

 怖い思いもしたし、危険な目にも遭った。それと同じだけ、もしくはそれ以上に、楽しいことや嬉しいことがあったから、旅を続けることが出来た。

 過去を振り返る暇も、未来を夢見る余裕もなかった。ただひたすらに今を生き続けたら、いつの間にか長い時が経っていた。


 ぐるりと世界を一周して、最後に辿り着いたのは、何十年も前に滅びた故郷の村。

 遙かなる故郷は、思い出の彼方。

 本当に遙かな――手の届かないところへいってしまった。

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