Day11 栞

 読みかけの文庫本を手に取った拍子に、挟んでいた栞代わりの葉書がはらり、と床に落ちた。

 その辺にあったものを適当に挟んだだけだ。どうせダイレクトメールの類だろう、と思いつつ拾い上げれば、目に飛び込んできたのは「銀の三日月サーカス団」の文字。


 貴方を夢の世界へお連れします――

 冬の星座がシャラシャラと鳴り響く夜、三日月の真下でお待ちしております


 書かれているのはそんな文章と、ラメインクで捺された銀の三日月だけ。

 具体的な日時も、開催場所さえも書かれていない、そんな招待状。

 高鳴る胸を押え、厚手の上着を羽織って外に出る。

 

 折しも今日は星々が冴え渡り、三日月が輝く夜だ。

 散歩がてら、メルヒェンを探しに行ってみようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る