第7話




 ただ、そうつぶやいただけでランダム?

な感じに、五人もの、屈強な騎士が地面に

倒れ伏す。一瞬で、命を強奪し、息の根を

止められている。為す術もない。



 ニヒルな笑みを浮かべ、魔女はふたたび

蘇生の魔法を使う。一斉に糸を全て切られ

地面に倒れ伏した人形のようだった五人が

即座に身を振るわせ、 咳き込みながら蘇生

させられた。





「いいだろう。何度でも、殺してやる」



〔これが…………魔女〕



 団長の心中に、冷ややかなものが、棲み

始めた。これまで、これほど弄ばれたこと

などなかった。国内最高難度の試練を軽く

クリアーし、入団後は、あらゆる技術と、

魔法と薬で人体強化を繰り返し、生存し、

鍛錬と練磨をかさね武功を積み、凶悪無比

なる人外や獰猛な魔獣、異界の悪魔も逆に

葬り、討伐し、撃退してきた。



 しかし、そのどれとも異質。

 異界の侯爵クラスでも、交渉など微塵も

なかった。文字通り、圧倒してきた。



 あれらと、何が違うのか?



「正真正銘の化け物め」



 団長?の、吐き捨てた一言のどこが琴線

に触れたか、つくづく人の悪い笑顔を浮べ

ると、魔女は、どことなく、また論点を、

ねじ曲げてきた。



「魔女が、魔法使いが、物理的に弱いと、

 なぜ、思い込んでいるのか?なぜ、そう

 思い込まされているか?その思い違いを

 根底から、覆してやろう」




 意味が分からない。

 そんな思い違い…………



「お前!!!!」



「お前も!!!!」



「お前もだっ!!たな!!!!」



 音もなく、瞬間転移しながら、魔女は、

またしても、順番や規則性もないように、

三人を物理で殴り殺す。



 最初の者は頭が吹き飛び、次は手刀で、

斬撃無効であるはずの鎧込め、袈裟懸けに

心臓まで斬りこまれ、三人目は腹パン一撃

で、腹の皮は残したまま、内臓と頚椎が、

背中側に全て吹き出た。




 三人が、地面に倒れる音を聞くよりも、

魔女は、元の位置に立っている。右手が、

血に濡れていた。



 当然、また蘇生させられた。三人とも、

咳き込みながら、嘔吐している。空えづき

である。ギリで、無貌の仮面を外せている

のは、せめてもの僥倖であろう。



 どうも、見てくれに騙され、魔法使いと

勘違いしているのを、勘づかれたようだ。

プログラムを練り直すか?



 しかし…………



 こいつ……!!



 つい、左手を握り込みすぎて、剣の鞘に

ヒビが入りそうだ。団長?は、怒りで我を

忘れそうにまで、追い込まれていた。



「抜くか?」



 魔女が、これでもかと人の悪い聞き方で

団長?に問う。



「ちょょょおおおと!!待った!!!!」



 魔女が、大声を張り上げた。

 両手を前に出し、待った!!のポーズを

慌てふためきながら、している。




 団長?のこめかみに、まさに怒りの筋が

刻まれた。





        ( ꐦ 'ヮ' )




 右手が、平手のままで微かにわななく。



「騎士様よお!?すまねー」



 魔女が、さきほどの怜悧で冷酷で人間味

の薄い酷薄な声音と、うってかわり、同じ

声帯でありながら、その声音に含む感情と

魂は別物!?では無いか??と思うほどに

様変わりした一声を発した。



 その声の変わり様は、さながら声優ばり

であった。




「〔はああああ!??〕」




 団長?と魔女が同時に疑問を発したのは

偶然とはいえ、分からぬでもない。




〔勝手に!?かわってんじゃねー!!

 ゴロー!!〕



 魔女のまとう雰囲気が一変している。

 素で、あわてふためいている。

 演技などでは、到底ない。



「まずは!!

 まずは、話を聞いてくれ!!」



 そして、魔女は日本人らしく、その頭を

下げた。



〔正気か!?ゴロー??

 そんなの通用  〕



「い…… いや、いいだろう。

 話なら聞こう」



 なぜか、予期せぬ切り返しをしてきた、

団長?の様子も、どこかおかしくなった。

極力、隠そうとしているようだが、明らか

に、動揺している。




〔変われ、ゴロー。ブチ殺す!!〕



 吾郎は、無視した。



「俺は、この御神紋を持つ正統なる、この

 神の、地上における神権執行代行者」



 吾郎が、噛むことなく、朗々と騎士たち

へと言いながら、右手の平に魔力で御神紋

を描いた。



「ゴローだ」



 吾郎は、あえて名字を言わなかった。

 余計なトラブルを生む可能性を感じたから

だ。吾郎も、異世界転移・転生ものは大好き

であった。



 が、しかし……




〔〔〔なんと!?可愛らしい名?だ!〕〕〕




 騎士団員の何割かが、頬を朱に染めながら

内心にて、身をよじらせた。吾郎はこの時は

知らず、後々、転げ回るほど後悔することと

なったが、この国を含む語圏においてゴロー

なる名は、日本人でいうところの美奈子とか

小百合とか瞳とかエリカとか沙織など、兎角

美人を連想させる名であった(汗)



 まさかの、名前で魅惑効果を発揮!という

事態が発生。吾郎なら良かったのか?

 しかし、吾郎は、自らの名をゴローとすでに名乗ってしまった。もう、引き返せない。



 ましてや、魔女そのものは見てくれすらも

チートレベルで、悩ましいほどに見目麗しく元々の魔女が持ち合わせていた、生き馬の目も射抜くしたたかさや隙のない狡猾さ残忍さを今の吾郎は、表情や雰囲気に持ち合わせておらず、そこに吾郎本来の人の良さや気弱さ

や優しさが乗っかっていた(汗)



 燦然たる、花のかんばせに相応しい相貌。



 同じ美女であっても、殺意や、ニヒルさで

あふれているよりも、人の良さや、愛嬌さが

にじみでているほうが心掴まれるというものであろう。


ましてや、その美女がなんの前触れもなく、

慌てふためいていては、やんごとなき身分で

ある騎士達とて、身悶えするほどであった。



 それほどまでに…………

ゴローは、めっちゃくちゃ!?に、おめめ

がクリクリっとした、愛嬌たっぷりの純真

で、人好きのする、かわゆい顔であった。

しかも、正統な御神紋をこの世にあらわす

さまは、神聖光輝にして、佳麗かつ神秘的

ですらあった。




 団長?以外の全ての騎士達が、地に片膝を

着き、こうべを少したれ、礼をとる。



「聖女様……」





 と…………。





 いや💦



 魔女だから💦💦

 もっというなら、魔女と日本のおっさん

だから💦あんたらの思い違いと、ベクトル

反転してんかんな💦💦



 真逆だから💦💦



 































 






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