第2話

 此処は、地球の存在する泡沫宇宙次元とは

異なる、泡沫宇宙次元世界の数多ある惑星の

一つ。



 その惑星の極東にある大陸は三つの大国と

数多くの小さな属国に、いくつもの緩衝地帯

が組み合わさり、混沌であり、複雑怪奇で、

三竦みな上に、抜き差しならぬ、膠着状態と

いう情勢であった。



 そして、とある日。

 極東大陸のロテリアン皇国の僻地である、

ルデバジャン地方を、地球換算でMマグニチュード7.9

の前代未聞な巨大地震が襲った。



 これまでに、この国を含めた大陸において

小さな地震ですら珍しく、中枢の関心を引く

こととなった。表面上はだ。



 そもそも、ルデバジャン地方は、国の中枢

から離れた辺境であり、重要な都市や施設は

何もないのだから。



 他国からはおろか、自国民からの関心をも

数日で忘れされる些事であるはずであった。

表面上は。



だが…………しかし。










◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘




 震源地ルデバジャン地方より80キロ北西。



 けたたましく鳴り響く、不安をあおる連続

するサイレン。特級非常事態のサイレン。



 蜂の巣をつついたような騒ぎで、極秘警備

の、特務騎士団の常駐施設は、てんやわんや

であった。



「何事か!!!!?

 状況は!!!!!!!?」



 特務騎士団団長、マイケル・ムーグスが、

管制室に怒鳴り込んだ。地震警戒警報とは、

別の非常事態だからだ。



 それも、起こりうる最悪の予兆だから。



「ムーグス!!!?

 来たか。



 警備中の極秘研究施設が、直下型地震で

 倒壊した。

 構造計算を超えた地震だ。上層部は施設

 の完全破棄を、即刻、命じてきた」



 それは、そうだろう。

 致し方ない事だと思う。



「こちらは、即時、全ての研究施設の爆破

 を敢行。

 地上地下とも完全な破壊を確認した。



 が……

 別棟の大深度地下研究施設から爆破より

 先に、最強度拘束殼の射出成功が、地表

 にて確認された。

 三分前だ。

 地震波早期感知後、別コマンドで、射出

 が組み込まれていたようだ」



 だから、三分前からサイレンが鳴る羽目

になったか。

 最強度拘束殼は、研究施設から、南に、

30キロ離れた、ルテシアン王国と、隣国の

国境緩衝地帯付近のようだ。



 中身が、目を覚ましたら…………

 そこいらで、うろちょろしてるなら……

まだしも国境緩衝地帯を超え、好き勝手に

隣国へ密入国するほど知恵が回るならば、

厄介だ!!

 


 ムーグスが、苦虫を噛み潰した面持ちで

命令を下した。



「第一団、第二団は、対厄災級魔獣兵装で

 転移門通過、最強度拘束殼地表到達地点

 から前方700メートル地点に転移。

 拘束殼並びに中身を視認後、これを完全

 に殲滅せよ。









 魔女狩りだ」














◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘◘



 別棟大深度地下研究施設より……

南に30キロ。




 荒涼とした何も無い褐色の荒野に、実に

不釣り合いな白色の金属カプセルが、ただ

一つ、ぽつんと在る。

 擦り傷一つない姿を朝日が晴晴と涼やか

に照らし始めた。



 微かな起動音をカプセルが放つ。



 いたるところから数秒、エアを放出後に

カプセルが解放された。





「んあ!!!!?」



 パチッ♪♪と、つぶらな瞳が開く。

 開け放たれた、ハッチからのぞく、朝焼け

の青空。

 その瞳は、まだ少し虚ろで、上手く状況を把握しきれてはいないようだ。



「ど…………こ……だ??ここ????」



 そう、発した途端、\( •ω•´ )/ばっ♪♪

と、上体を起こした。

 吾郎は、辺りを見回す。



 何も無い。

 ここも、違う意味で何も無いのだ💧

 びっくりするくらい先まで、荒涼した、

堅く、荒んだ褐色の、のっぺりとした荒野

が続く。





「なんじゃ!!!?こりゃ!???」



 空と大地を確認し、己が身を見、絶叫。

 己が上体には、成りなりて成り足らず…

はずであったところに、成るものがあるのだ。



 たわわと…………。



 そして、下半身には……成りなりて成り

あまるモノが無い!?

無いのだ!!!!!!



「まじか|д゚)」!!!!?」



 

 あわてて、立ち上がる吾郎💦💦

 ぶら下がっているであろうモノも無い。

 二つ、共にだ!!



 やはり、無い(T_T)



 有るのは微かな盛り上がりに、うっすら

とした金色のしげり。そして、スリット。

ぴっちりと閉じている。使い込まれた挙句

に、だらしなく拡がってはいない。





 かーみーさーまー!!!!!!



 吾郎は、思い返した(汗)

 あの時、神は…………



「あー、その辺はの♪♪

 任せんしゃい♪♪任せんしゃい♪♪

 もう、いい感じに要望に応えられる物件

 の目星はつけておるから♪♪♪♪」



 と、幾分……投げやりで、すチャラかな

返答では!?なかったかと💧



 吾郎は……そこはかとなく、絶望した。


 










 


















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