第33話 作話 -その1 キャシーの結婚式ー
Hope Island Golf Course Wedding.
白い建物から一面に広がる緑の芝が見渡せる。
キャシーとジャックはここで式を挙げた。
ジャックの友達がこのコースのメンバーで
式場の予約をしてくれたらしい。
オーストラリアの結婚式では
新郎の友達や兄弟がグルームズマンとして、
新婦の友達や姉妹がブライズメイドとして式を見守る習慣がある。
大抵、ブライズメイドはおそろいのドレスを着ている。
「あんなフォーマルなところで
式を挙げなくてもいいって言ったのに。
私の友達にブライズメイドのドレスを着せて
参列してもらうなんて…
ぴったりのサイズのドレスがあるわけない。
全部オーダーするなんて無理だよ」
と、キャシーが言ったように
彼女の友達はそれなりの年齢で
みんな結構太っていた。
あのおばさまたちが、おそろいのドレスを着て
ズラリと並ぶと、ちょっと怖いかもしれない
と心の中で笑った。
そこでブルームズマンもブライズメイドも
二人の孫たちにさせることにしたらしい。
孫娘たちはおそろいのフリフリのピンクのドレスを着て
孫息子たちもきちんと正装していた。
大役を授かったちびっ子たちは、ちょっと緊張した様子で
神父様の言葉を聞いていた。
子供たちだけでなく孫たちも参列する挙式。
友達も集まってにぎやかで楽しいものだった。
すました顔をして参列していた子供たちも
パーティーが始まると、一気に元気を取り戻して
真ん中にある噴水に手を入れて
バシャバシャ水をかけっこして遊び始めた。
せっかくの洋服がびちゃびちゃになってしまっている。
キャシーとジャックも
よく飲んでよく食べてよく踊った。
酔っぱらった友達は噴水の淵に立って踊り
足を滑らせて水の中に落ちてしまった。
日本の結婚式と比べると
何でもありのパーティーだった。
マークは「結界」の外には出られないので
家で私の帰りを待っていた。
7年半も同居していたキャシーがいなくなると
家の中が、がらんと寂しくなった。
帰ると、マークはどんな式だったか
いろいろ聞いてくるに決まっている。
最近は物忘れが多くなって
さっき言ったことを忘れて
また同じことを聞いたり
過去の出来事を自分で都合のいいように
話を作り替えることがある。
例えば、キャシーがルームシェアをすることになった
いきさつを作り替えてしまっている。
あの頃、マークが仕事に行けなくなって
家賃を払うのに困っていた。
シェアメイトを探していると
ケンとゴードンに話すと知り合いのキャシーが
ちょうど部屋を探しているところだと紹介してくれた。
それを 、ャシーがオーナーと喧嘩して
追い出されることになって困っていると
ケンとゴードンから頼まれたので
仕方なくオーケーしたことになっている。
新婚の間に他人を同居させたくなかったのにと…。
どこで話がすり替わったのかわからないが
マークのなかではいやいやキャシーを
迎えいれたことになっている。
今日も質問攻めにあうのかと思うと
ウンザリしながら玄関のドアを開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます