第18話 マインドフルネス
「今ここに」ただ集中している
心のあり方。
マインドフルネスは
この状態のことや
それを目指すプロセスのこと。
目的は脳や心のデトックス。
高橋直美先生。ゴールドコースト
在住のカウンセラー。
マインドフルネス統合認知行動療法で
日常のストレスから様々な心理疾患に
いたる治療を専門にされている。
小柄で眼鏡をかけていて、一瞬
神経質そうに見えたが、笑顔が
とっても優しそうだった。
「ナオミという名前は英語では
ネイオミと発音されるので、最初は
すごく嫌な思いをしました」と。
私の緊張をほぐすように
自己紹介された。
最初にカウンセリングを
受けたいと思った動機を話すように
言われた。
これまでのマークとの生活を
思い出すままに話した。
順を追って簡潔に話そうと
思っていたのに、話し始めると
いろいろな思いがよみがえってきて
涙が止まらなくなった。
先生は黙って私の話を最後まで
聞いて「ずいぶんつらい思いを
されましたね」とだけ言った。
ごく簡単にマインドフルネスに
ついて説明された後、
これは脳の訓練だから、
最初のうちは30分の瞑想を
1日2回、毎日するように言われた。
「始める前から『私にはできない』
とおっしゃる方が多いですが、まず
始めてみることです。
できない理由を探してはいけません」
優しいものの言い方の中に
強い意志を感じた。
「リラックスして、心の悩みを
解消するという治療法もありますが、
リラックスするための場所や
道具がなければできません。
マインドフルネスのハードルが
高いとあきらめて、ほかの治療法を
試みた多くの人が、結局
この治療法に戻ってきています」
正直、30分の瞑想を1日2回って
私にできるのかと思っていたところで
心の中を見透かされたような
気がした。
少しずつ練習していくうちに、
何かが変わっていくのだろう。
焦ったって仕方がない。
話を聞いているうちに
やってみようと決心した。
「では少し練習をしてみましょう。
5分間目を閉じて呼吸に集中します。
鼻の穴のあたりの空気の流れに
集中する感じです」
5分間がとても長く感じた。
カチカチをいう時計の音が耳について
離れなかった。
簡単なことのはずなのに
集中するのは難しい。
先生の目も気になった。
「はい。目を開けてください」
やっと終わった。
「ずいぶん体のあちこちが
動いていましたね。
何かに反応して
集中できませんでしたか?」
「時計の音が気になって」と、
小さな声で答えた。
まずは「呼吸」に集中する訓練。
CDを聴きながら
トレーニングすることになる。
これを1週間してから、また
カウンセリングに
来るように言われた。
カウンセリングを受けるって
何か悩みとか困ったことを話したら、
それに対する私の態度が、
良かったとか悪かったとか、
こういう方法もありますとか、
教えてくれるのかと思っていた。
こんなものなのか?と少し
がっかりした感じもしたが、まだ
1回目で何もわかっていない。
ごちゃごちゃ考えて自分の意見を
述べても仕方がない。
「まずやってみること」
先生の言葉が頭に浮かんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます