第3話 初めてのデート
運命を感じた瞬間が訪れることになる。
6時過ぎに待ち合わせの場所に着いた。
サーフクラブの駐車場。
あたりを見渡したがマークはいない。
「まだ来ていないのか」と、思ったときに携帯が鳴った。
「Hello, Ellie speaking」
「My beautiful Pinky,
そのまま、まっすぐ歩いて」
私はピンク色のパーカーを羽織っていた。
「マーク?どこ?」
「そのまま道路を渡って」
言われるままに道路を渡ると、
携帯で話をしている
背の高い人影を見つけた。
「Hello, Ellie」
いつものはにかんだ微笑みだったけど、
私の心臓は予想外にドキドキしていた。
「何が食べたい?」
「…」
言葉が出なかった。
「ちょっと歩こうか?」
オアシスショッピングセンターの
レストラン街を歩きながら
どの店に入るか決めることにした。
ライトアップされた噴水のそばを
通り過ぎながら
「イタリアンはどう?」と
マークが聞いた。
「わたし、イタリアン好き。」
二人はイタリアンの店に入った。
ちょうど
店の中と外の境目の席が空いていて、
そこに案内された。
ピザも好きだけど
ちょっと食べにくいかな?
とか考えながらメニューを見ていると、
マークが
「このクリームパスタいいと思うんだけど
トマトソースもおいしそうだ」と言った。
「それじゃあ、両方頼んでシェアしよう。
パスタって、どこでも量が多くて飽きるから」
と私が言って、
マッシュルームのクリームパスタと
シーフードのトマトソースのパスタに決めた。
マークが聞いた。
「ワイン飲む?」
私がうなずくと
「赤?白?」と聞くので
「赤が好きなんだけど
このメニューだったら白?
ロゼがあったらロゼがいい」と答えた。
にっこり微笑んで
彼はロゼの中から一つ選んで指さした。
まずは乾杯してワインを飲んだ。
「出張でゴールドコーストに来るのが
楽しみだったんだ。
La Grandeに泊まってEllieに会えるのが。
君はいつもニコニコして
誰に対してもやさしい。
僕とケミカルが同じだと思ってた」
ケミカルが同じって、
よくわからなかったけど、
きっと同質だとかいう意味なんだろう。
やっとパスタが来た。
「エリーの言うとおりだ。
分け合うと2つの味が楽しめていいね」
と言ってパスタをシェアして食べていた時、
突然、花火が上がった。
えっ?なんの花火。
その日は11月23日。
日本なら勤労感謝の日だけど、
オーストラリアでは何の日でもない。
なのにいきなり花火が上がった。
外側の席にいたので座ったままで
打ち上がる花火が見えた。
花火に見とれていたら、
知らない間にマークが横に座っていた。
目が合うと、
「こっちの方が、よく見える」とマーク。
次々に打ち上げられる花火を
ぼーっと見ていたら耳元で、
「Ellie, I love you」 と
マークがささやいて首筋に軽くキスをした。
体中に電流が走った。
この時、私は運命を感じた。
きっと一生、彼と一緒に生きていく。
その後何度もマークは
I love you. とささやいてくれた。
花火の音が大きくて
はっきり聞き取れなかったけれど、
彼の息づかいや
肩にかけた手のぬくもりから、
あふれるような彼の愛を感じていた。
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