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 涼子は息をはき、続ける。

「そこからは大慌てでした。 部屋を出てどうするべきか話しました。 皆、すぐに警察に通報するという発想に至らなかったのです。 それだけ頭が回っていなかった。 すると執事の佐藤さんが通報するのはよしましょうと言いました。 空気は変わったのです。 春人とゆみは同意しました。 私たちは醜いのです。 その選択をしてしまった。 山田家を守るために、ビジネスを守るために選択をしてしまった。」

「醜いですね。 オレには理解したくもない。」

「おっしゃるとおりです。」

「話の続きをしてくださいよ。 二杯目のコーヒーが冷めてしまう。」

 宮田はやれやれと感じた。 木村は平然と初対面の人に悪口を言う光景。

 宮田には木村のそういう言動が理解てきない。

「部屋を再びみると、夫の死体はなくなっていたのです。 血だけはもとのところに残っていたのです。 私は尋ねました。 誰か運んだのか?っと。 3人とも首を横にふりました。」

 木村はコーヒーを飲みほして尋ねた。

「あなたは話をしている間に死体に触れなかった?」

「ふれていません。」

「あなたが山田哲人を殺したんですね?」

「い、いえやっていません。」

「すみません、反応をみるために訊いただけです。 反応をみるかぎりやっていないようです。 あなたから緊張した様子がみられない。 目をそらしていたら疑いはかかっていたんですが、それもない。 涼子さんへの疑いが少しはれました。」

「木村さんは私を疑っているのですか? 私は自ら捕まりに来ているようものではありませんか? 違いますか。」

 涼子は真っ直ぐ見て木村に答えた。

「その線もなくはないんです。 現場をみないと分からない。 消す材料がそろっていないから疑うべきものを疑うんです。 あなたが逆の立場ならそうするでしょう。」

「えぇ、そうするでしょう。」

「話を戻しましょう。 探偵を依頼するのを言い出したのは誰でしょうか?」

「私です。 なるべく現場を荒らさないようにも言いました。 みんなも承知してくれました。」

「異論を唱える人はいなかった?」

「そうです。」

「救いようのない人たちだ。 あなたはまだましな方だ。」

 

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