ばいばい、ばあちゃん。
妹のメイと二人旅をしたのは二年前。
私たちは夏、旭川のばあちゃんちに向かった。
住んでいる恵庭から、同じ北海道でも通うには遠く、遠出と言うには近い。
最後に会ったのはいつのことか。
遊びに行きたくなったのか、神様から伝言を授かったのか。
ある日、メイが呟いた。
「姉ちゃんと、ばあちゃんち、行きたいなあ」
私と母は目を見合わせたものだ。
数年ぶりに逢うばあちゃん、頬がこけ、唇の上が皺くちゃだった。
記憶の通りの愛が詰まった笑顔だった。
私たちは色んな話をした。
メイがリレーで一位をとったこと。
私が旅館のバイトを始めたこと。
両親がおととい喧嘩したこと。
ばあちゃん、ニコニコ聴いていた。
「二人さあ、名前の意味、聞いた?」
「え? 聞いてない」
「モエとメイ。合わせて、萌芽」
「ホウガ」
「物事が始まるって意味さ」
「ふうん」
「いい名前もらったねえ。大事にしなよ」
「うん」
それから1週間後、ばあちゃんは、静かに息を引き取ったらしい。
+++
note「旅する日本語展2020」投稿作品。
400文字以内、本文かタイトルに「都道府県名」「キーワード」明記指定。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます