「センパイ、これがギャップ萌えですか?」
「ゆ…結城さん…?」
私のその言葉に驚いたのはセンパイだった。
それもそうだ。さっきまでつまらなそうに話を聞いていた女子生徒が急に「一目惚れしました!」と言ってきたのだから、ビックリするだろう。
目をぱちくりするセンパイの両手を握って私はこう続けた。
「えっと……」
「好きです! 自分の高校の魅力をあんなに楽しそうに伝えるのも凄かったですが、いつまでもぶすくれた私への態度もずっと変わらないところとか尊敬しました! 好きです!」
「あはは…、それなら良かったです…」
センパイはやや苦笑いを浮かべながらそう言って私の両手から自身の両手を抜こうとする。がそんな事はさせない。がっしりと掴んでいる。それをニコニコと笑いながらやってのけているのだからセンパイも多少は恐怖を感じただろう。
「あのっ、学校を案内してくれませんか?!」
「えっ」
「ダメ、ですか?」
「でも気乗りではない、と…」
「そんなの、センパイもお話を聞いたら気乗りになりましたよ! さぁ! 行きましょう!!」
早口でそう言った私はバッ、と立ち上がってセンパイの手を引いて校内に向かう。
それからは校内で行っている部活別の出し物を見て回った。といっても「うちの部活はこんな事をしています〜」と軽く体験ができたり、実績発表をしていたりと様々だ。
他にも在校生への質問ができる教室や生徒会による行事発表会など、沢山の出し物があった。
そんな沢山ある中から私は美術部に来ていた。中に入ると数人の見学者がいた。
美術部ははやり広く、その広い部屋の中に沢山絵が飾ってあった。その一つ一つのクオリティが高く、綺麗だ。
「センパイたちの部活は展示会なんですね!」
「まぁそれくらいしか出来る事がないので」
「センパイの絵はどれなんですか?」
「こちらです」
センパイはそう言うと入口近くの絵を指さした。
センパイが描いたという絵は海に浮かぶ星々の絵だった。夜空に浮かぶ星々と海に浮かぶ星々が少々描き方が変わっていてリアリティが増している。
夜空も一、二色ではなく何色も使っている。よくよく見てみると緑も使っているみたいだ。
「綺麗、ですね…」
「そうですか? …嬉しいものですね」
「とても繊細で、センパイみたいです!」
「おや。まだ会って数時間というのに僕が繊細だと思うのですか?」
「はい! センパイは繊細です!」
私がニコッ、と笑ってそう言うとセンパイは嬉しそうに微笑んだ。
「そうでもないですよ」
「え?」
「僕は意外と大雑把ですよ」
センパイはそう言うと絵の緑色が塗られている部分を指さした。
「さすがに発表会で飾る絵ですから黒や紫、灰色などだけで空を作り上げるのは如何なものかと思いましてね。緑を適当に黒と混ぜて塗ったんです」
「え、そうなんですか?」
「繊細に塗ってると思いましたか? …ふふ、残念ですね。意外に大雑把なんです」
「………これがギャップ萌えですか?」
「すみません、よく分かりません」
「SIRIみたいになっていますよ?」
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