「センパイ、助けてください!!」
「えぇっと…それで…、猿投クン」
「だーかーら。優二でいいですよ、優良さん!」
「なんで私は今、手を引っ張られているのかな…?」
私は小走りしながらそう言って優しく繋がれた左手を見る。うぅ…、まだセンパイと手も繋いでないというのに…。さらば…私の純情……。
「だってこうでもしないと優良さん、遊んでくれないでしょう?」
「遊ばないですけど?!」
「いーから! いーから!!」
ダメだ…、この子全く話を聞かないタイプだ…。と思いながら私は額に手を当てる。センパイからしたら私もこんな感じなのだろうか。…気をつけよう。
そんな事を心に誓っていると目的地に着いたのか、猿投クンは止まった。
「優良さん!! ここでお茶しましょーよ!」
そう言って猿投クンが指さしたのはドーナッツ屋さん。カフェとかファミレスじゃなくてドーナッツ屋さんというチョイスが中学生らしくて可愛い、と不覚にも思ってしまった。
そんな事を思いながら私はニコニコと笑っている猿投クンを見る。 しかしニコニコと笑っている猿投クンとは対照的に私は内心焦っていた。
勢いでここまで来てしまったが…。男女が二人、一緒にいるのはまずいんじゃ…。
そんな事を思いながら私は口を開く。
「あの、猿投クン…」
「はい! なんですか?!」
うっ…、キラキラしてる笑顔が眩しい…ッ。
猿投クンのキラキラオーラに耐えながら私は続ける。
「あのね、私…。一緒にお茶はできない…なぁ…」
「………え」
あ、猿投クンの時間が止まった。
ハタッ、と動きが止まった猿投クンを見ながら私はやっぱり申し訳ない気持ちになる。こうしてお茶に誘ってくれるのは純粋に嬉しい。
しかし私にはセンパイという素敵な彼氏がいる…!!!猿投クンのお誘いにはのれない。ごめんよ、猿投クン…!
「な…、なんでですか…! もちろん俺の奢りですよ…!」
「お、お金の問題じゃなくて…」
ぐわっ、と詰め寄る猿投クンを両手で牽制しながら私は慌てて説明をする。
「実はね、彼氏がいて…」
「えっ。彼氏、いるんですか…?」
そう言って悲しそうに眉を顰める猿投クン。猿投クンの捨てられたような子犬のような表情が心に刺さって痛い。
さっきまでとは真反対な弱々しくなってしまっている猿投クンは上目遣いで私を見る。
「……もしかして、一緒に帰ってる人ですか…?」
「えっ、そうだけど…」
「なんで猿投クンが知ってるの?」
そう聞こうとした時だった。
「優良さん!!」
「ぅわっ、え…?! は、はい!」
「その彼氏について教えてください!!」
「………え?」
猿投クンの表情は一転、なぜか燃え上がっている。え、なんで燃え上がってるの??
「俺、優良さんの彼氏について知りたいです!」
「えっと…センパイの事を知ってどうするの…?」
「先輩なんですね! 年上が好みですか?!」
「え、あの…っ」
「ここじゃなんですから、中に入って話しましょう!!」
やや早口でそう言った猿投クンは半ば強引に私の腕を引いてドーナッツ屋さんに入る。中学生といっても男子。力の強さには勝てない。結局、私は為す術もなくただ引きづられて一緒にドーナッツ屋さんに入店。
えっえっ。
誰でもいいので(できればセンパイ)!!!
助けてください!!
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