「センパイ、最近ツンが多すぎません?」
「ホームルームのアレは先輩の所に行ってたんだ…。凄い行動力…」
お昼休み。私とえみは机をくっつけながらお昼ご飯であるパンを食べていた。私が食べているパンは購買で売っているイチゴジャムパン。えみの食べているパンはサンドイッチだ。これも購買で買った。
センパイはお弁当の日と買い弁の日がほぼ交互にくる。購買に行った際にセンパイに会えるかとも思ったのだが、残念ながら会えなかった。どうやら今日はお弁当の日の様だ。
「センパイの事を考えたらいてもたってもいられなくなっちゃって…」
「あはは」、と笑うとえみは呆れたように大きくため息を吐いた。
「あまりしつこいのはどうかと思うけどアンタのあの猛烈アプローチに動じない先輩だもんね。大丈夫か」
「そうだよ! 私とセンパイは愛の糸で繋がれてるんだから!」
「おや。“糸”なんてか細いもので良いのですね」
不意に後ろから声をかけられた。大好きな声だ。首がもげるんじゃないか、という程大きくそして激しく顔をそちらに向ける。
するとそこにはニコニコと笑顔を浮かべているセンパイがいた。
「センパイっ! ホームルーム直後以来ですね!」
「はい、その節はどうも」
私はそう言うセンパイを再度しっかりと見るために体ごとセンパイの方に向ける。
制服はきちんと着こなしてしているし、寝癖もない。表情は笑顔だ。てっきりお昼を一緒に食べるために来たかと思ったが手には何も持っていなかった。
「あれ? センパイ、手ぶらですか?」
「はい。口頭で知らせる事がありましたので」
「なんでしょう?」
「今日は部活はお休みですが副部長としての仕事がありますのでお先に帰って結構ですよ」
「いえ。待ってます!」
「ですが、遅くなりますので」
「待ってます!!」
「そこのお友達と帰ってはいかがですか?」
センパイはそう言うとチラッ、と私の前に座っているえみを見た。そんなセンパイから目線を一切話さずに私は答える。
「えみは一人で帰りたいらしいので」
「…優良(ユラ)、先輩も忙しいんだから。大人しく別で帰りな」
顔を見なくてもわかる。えみは物凄く面倒くさそうな人(私)を言い聞かせているせいか、えげつない表情をしているだろう。
ごめんね、えみ。それでも譲れぬものはあるものなのだよ。
「センパイと帰りたいです」
「待っている間、どこで何をしているんです?」
「教室で堂々と携帯をして待っています!」
「校内で携帯は禁止ですよ。それに……」
センパイはそう言うと私にも聞こえない声でボソッ、と何かを呟いた。
「……センパイ?」
私がそう言って首を傾げるとセンパイはハッ、とした表情をしていつもの笑顔を浮かべた。
「いえ、なんでもありません」
「え、でも…」
「何か、言ってましたよね?」と続けようと口を開いた時だった。
「心配なら心配って言えばいいと思いますよ、先輩」
「え?」
今までのやり取りを聞いていたえみがそう言って焦れったい、と言いたげな表情でセンパイを見た。センパイはというと一切表情を変えずにいた。
「えみ、さん…でしたか? なぜそう思うのです?」
「そんなの、二人の会話を聞いていれば分かりますよ。先輩も正直になればいいのに」
そう言うとえみは最後の一口のサンドイッチをパクリ、と食べてミルクティーで流し込む。
「……………」
センパイは何も言わずにニコニコと笑っている。センパイがそうしているという事は……。
「え、センパイ…、マジですか?」
「何がでしょう?」
「センパイ、正直に言ってください!今日は一緒に帰れるんですよね?!」
「今日は一緒には帰れませんよ。別にあなたを心配しているわけではありません」
「センパイ、最近ツンが多すぎません?」
「さて…ツン、って何でしょう?」
「知ってるくせに!!」
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