138. 急変

 その後の狩りは、初心者が半分のパーティーにしてはうまく行ったほうだと思う。

 俺の作った魔道具の助けもあり、皆それなりに狩りに成功していたのだ。

 うっかり逃した奴はリーサ、俺やシルヴィ、あとは後ろのガルゼたちが処理していたため、全体的な成功率はほぼ100%と言えた。


「いやー、慣れてきたな」

「この調子なら結構できそうだ」

「あとの課題は体力づくりですね」


 俺がそう言うと、自信をつけていたエルジュとイルク先輩が露骨に嫌な顔をした。


「…今日オレそんなに疲れなかったんだけど、これ以上必要か?」

「必要なのは継続だからな。だいたい疲れが軽減されたのだって体力づくりをやったからだぞ」

「確かにな…」


 イルク先輩は渋々といった様子で俺の正論を受け入れたようだった。

 いつもの冒険者としての活動よりは確実に軽く、俺やリーサたち経験者は特段苦労することもなく活動を終えた。

 そうして、シャンツ村に戻ってきて――


「…なんだありゃ、騒がしいな」


 ガルゼが顔をしかめた。

 確かに、何やら騒ぎ声が聞こえてくる。

 それも、あまり良い雰囲気は感じられない。

 あたりを観察しながら村に入ると、見覚えのある顔があった。


「ん?お前ら、あのとき街に入るときに会った…赤魔法使いの!」

「あぁ!その節はどうも」


 たしか、シェードゴールズを恨んでるフェルクという人とその一行だ。


「この騒ぎ、一体何があったんですか?」

「それが俺たちにもわからねえのよ。いつも通りここを経由して中心部に商品を運ぶ途中だったんだが、ここで止められちまった」

「理由も言われてない。なんなら、足止めする彼らすらわかってないようだった」


 横から情報を付け足したのは、あのときアルナシュ先生と話をしていた人だった。


南蛮シェーゴが攻めてきたってんなら、俺も行くんだが」


 フェルクの言葉に反応しかねていると、後ろから走る足音が聞こえてきた。


魔科研エルヴォクロットの皆さーん!よかった、今来てくれて…!」

「マーヴェさん!?どうして…!」


 リーサが真っ先に反応する。

 エルディラットのギルドでエーシェンさんとともに受付嬢をやっているマーヴェさんが、そこにいた。


「詳しいことはあとで説明します!とりあえず着いてきてください!」


 息を切らしながら訴える彼女の必死な様子に、俺たちは顔を見合わせる。

 そして、フェルク達との別れの挨拶もそこそこに、彼女のあとを追った。



 俺たちはギルドの応接室に通された。

 部屋の中は、細かい違いこそあれどかなりエルディラットのそれと似ている気がした。もしかしたら統一規格みたいなものがあるのかもしれない。


「一体、何が起こってるんですか」

「詳しいことはまだわかっていませんが…ある種の騒乱が、市内中心部で発生しているようです」

「騒乱?」

「グロシーザ教が関わっている、といった話はあるのですが…何分、えー…」


 煮え切らない様子で、不安そうにちらちらと視線が揺れている。

 比例するように、俺たちの不安も増大していく。


「…マーヴェさん」

「は、はい!」


 アルナシュ先生のきっぱりとした一言に、マーヴェさんの背筋が伸びる。


「情報を隠したいなら隠してもらっても構いませんが、せめて悟られないようにしていただけませんか。いくら訓練を受けているとはいえ、彼らはまだ子どもですので」

「す、すいません…これは、未確定情報なのですが」


 そう前置きして、マーヴェさんは口を開いた。


「この件に、『南』が関わっている可能性があります」

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