129. 観光二日目
翌日も、よく晴れていた。
今日は帰る日だから長居はできないが、それなりに見て回ることはできるだろう。
昨日一日で全部街を見られたとも思わない。
「本日は自由行動ですが、
「いつも通り私だ。あと騎士団から一人来てくれるらしい」
アルナシュ先生と騎士団の人なら、特に問題も起きないだろう。
もう片方のガルゼたちはそもそも大人だし。
「どこか回りたいところがある人はいる?」
俺が聞くと、エルジュとシルヴィが手を挙げた。
エルジュがどうぞどうぞと発言権を譲る。
「わたくし、魔道具工房に行ってみたいですわ」
「オレも!オレも同じこと考えてた!」
「なるほど、社会見学か」
二人の発言に、イルク先輩が納得したように頷く。
「魔道具の店…たしかに、見ておくことも…重要…」
マーリィ先輩も同調する。
魔道具というものは、使用する魔法陣の力を最適化するための魔法陣に合わせたツールである(その点では
魔法陣を作る俺たちには、魔法とは関係ない道具の形の部分を作る技術も必須だ。
「お前たちがそれでいいなら。どこかおすすめの工房はありますか?」
「このあたりなら、インクリオス工房一択でしょう」
「では、案内をお願いしてもよろしいですか?」
「はい、お任せください」
こうして、今日は急遽魔道具工房ツアーをすることとなった。
俺たちが訪れたのは、この地方でも五本の指に入るほどの大きな店、『インクリオス工房』だった。
「研究室顧問のヨークリー・アルナシュと申します。急にもかかわらず、受け入れてくださりありがとうございます」
「いいですよ、国の未来のためなんですから…」
そう言いつつも、立派な髭を蓄えた工房の主――インクリオス氏の表情はどこか警戒しているように見える。
無理もない、ただでさえ傲慢な者が多いとされる赤魔法使いが見学に来たとなればそういう反応にもなるだろう。
特に、先日エルディラットで起きた出来事がきっかけのジュルペ追放事件の噂は、それなりに国中に広まっているらしい。
とはいえ、このままだと居心地が悪い。
その状況を解決したのは先輩たちだった。
「研究室長のイルク・ハウジリッドです。魔法陣や魔道具の研究を行っています。本日はよろしくお願いします」
「副室長の…マーリィ・エルヴェッタ…です…よろしくお願いします…」
二人の丁寧な挨拶に、インクリオス氏はどこか面食らったような表情になった。
「シルヴィーナ・アルティストと申します。主に魔道具の研究を行っておりますわ」
「エルジュ・オングスティートです。同じく、魔道具の研究や開発をしてます」
「アルティストって…あの、二大領主様の…!?」
シルヴィの家の知名度も手伝って、良さそうな雰囲気が出てきた。
「リーサ・マルティルートです。魔法陣の研究をしています」
「ヒロキ・アモンです。同じく魔法陣を研究しています」
「ヒロキ・アモンって…まさか、ジュルペ・アリーカーを倒した…」
「その通りです。彼とリーサは赤魔法使いの魔族として、同じ赤魔法使いへの悪印象を取り除こうとしています」
「これはこれは…」
客観的に見ると、俺といいシルヴィといい割と豪華なメンバーがいる。
とりあえず、インクリオス氏の表情から警戒は消え去った。
「失礼いたしました。それでは、我がインクリオス工房について説明させていただきます」
そうして、彼は話し始めた。
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