88. 進展
放課後、
昨日先輩に会えないまま一日置いてしまったら、若干気まずく感じられてしまったからだ。
「…とはいえ、ずっと逃げるわけにも行かないよなぁ」
「先輩たちも、はやく立ち直ってくれるといいんだけど…」
リーサと会話をしながら歩き、ギルドの近くまでやってきた。
通学時にも帰宅時にもいつも通るが、相変わらずここが賑わっていない日は一日たりともないように思える。
何ならいつもより人が多い気がする。昨日のあの事件が尾を引いているのだろうか?
「あっ、リーサちゃんにヒロキ君!ちょうどよかった!」
唐突に、後ろから女性に呼び止められた。
振り返ってみると、ギルドの制服を着た女性だった。確か…
「マーヴェさん?」
「覚えていただけてたんですねー、よかったですー!」
そうだ、よくエーシェンさんがこき使ってる人だ。
昨日も資料を持っていけとか言われていたな。
「実は例の事件について調査に進展があったんです、おふたりともギルドの方に来ていただけませんか?既にシルヴィーナ様とエルジュ君は呼んでありますので」
「進展ですか?」
「盗まれたものが一部見つかったんです!それと…」
「…確かに、わたくしが頼んでいた
押収されたそれらを見て、シルヴィは呟いた。
「どれも欠けているのは攻撃に転用できるものばかりですわね…わかりやすい」
積み荷の表と照らし合わせて確認していく。
そんな姿を横目で見ながら、俺は一つ疑問を呈した。
「で、なんでお前がここにいるんだ」
「え、あたし?」
ピンク色の長髪をぱっと広げて振り向いたのは、アリスだった。
「だってここに積まれてたのうちの荷物も入ってたし。昨日は夜中まで盗まれた荷物の確認につきあわされてたからもう眠くって眠くって」
言いながら、ふわぁとあくびを一つこぼした。
どうやら、今日に関しては授業中に眠りこけてしまったのはこのせいらしい。
「うちも一応アルティスト様の本拠地と同じシャンチェールってところに家があってさー。あたしが学生のうちはこっちに住んでるんだけど、アルティスト様が気を利かせて物資を送ってくれるんだよ。盗まれちゃったけど」
シルヴィと同様リストを眺めながら確認をしていく。
「うーん、貴重品は戻ってきてないか…生活必需品も減ってる?てか、これ使われてるよね?」
「その件に関してなのですが…賊の構成員を一名捕らえました。今ここに連れてきています」
職員が言い終えると同時に、部屋のドアが開いた。
腕を縛られたまま連れられてきたのは、ぼろぼろの布を纏った12歳かそこらの少女だった。
服のみずぼらしさとは裏腹に、明るい水色の髪の毛は透明感のあるつやが見られ、肩にかからない程度の長さに整えられていた。
少女はキッとこちらを睨みつけている。
「私腹を肥やすしか能のない貴族連中が!恥を知れ!」
「…語彙力が大変よろしゅうございますなぁ」
パワーのある第一声に思わず京都人になってしまった俺を差し置いて、リーサは何かに気づいたようだ。
「ねえ、あの子…こないだのスリだよ、多分」
「…マジで?」
俺はその真偽を確かめるべく、少女を観察することにした。
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