パルパイオニアへようこそ!

「セブンイ〇〇〇(コンビニのアルバイトから始まり)、カスターマーセンターのクレームに家庭教師...... ~ ......ビルやテナントの清掃に、建設、資源ゴミの仕分け回収に、燃やして良いゴミや燃やしてはいけないゴミの回収に、コック、ウエイター、販売員(実演デパート等含む)、監視員、警備員、交通誘導、代行運転、観光バスの運転水上バスも可能、大型トラックでの運送、クレーンにヘリコプターにセスナ、バイク便、装甲車や偵察機の操縦経験あり……あのぉーまだ続き、えっ? 漁とは船に乗って海や湖や川で行うあの漁のことでしょうか?」


「はい。漁師に知り合いがいるのですが、頭数が足りないからと半年程遠洋の方に、あの時は流石にまいりましたよ半年も海の上で生活をって、すみません。急いで続きを書きます」


「まだ、続くんですね……え? 猟ハンターの経験が、は? 野良作業? あのぉー野良作業とはいったいどのような仕事なのでしょうか?」


「田畑に果樹、あの時は雑木林や森の中にも行きました。農業と林野業を合体させた感じといえば分かり易いでしょうか?」

「レンジャーの経験も……」


・・・・・

・・・・

・・・

・・


「こっち(アリス)に移住する為ですか」

「はい」

 しかし何とも妙にリアルな夢だ。

「体力的にも身体的にもまだまだきつい仕事に堪えられるが、願わくば年齢を考慮し少しは加減して欲しい……ですか」

「できればで良いのですが、はい」


「オイラセさんの職歴ですと、PPピーピー(パルパイオニア)で紹介できる仕事でしたら全て卒無く熟せると思います。ですので先月新設されたばかりの、総務庶務雑務雑用ヘルプ等々を効率的に行う為のエリート部隊フリーランスに所属可能かどうか確かめてみませんか?」


 個人事業主として登録か。……アリスで生きて行ける最低限の金が、夢だし何でも良いか。

「はい」


「それでは、こちらのセンサーに右手の親指を、こちらのセンサーを両目で真っすぐ瞬きせず覗き込んでください。赤い光が上から下に走りますが目に害はありません。はいOKです」

「所属の審査は今ので」

「申請は終了しました。引き続き審査に入りますので、審査が完了するまであちらのフロアーでお待ちください。こちらの用紙はお預かりします」

「はい」


 誰もいないフロアーには、五人掛けの長椅子が十二本。

 カウンターが良く見える手前の長椅子に座り、呼ばれるのを待つ事にした。


 リアルな夢は冷める気配がない。

 憧れのアリスに憧れ過ぎて、このような夢を見るに至ってしまったのかと思うと情なくもあり恥ずかしくもある。

 だが、ここまで拗らせたなら寧ろ胸を張り誇っても良いのではないだろうか。

 何故なら、本物だから。アリスへの嘘偽りのない愛、憧れ、幼い頃からの夢、費やした時間は本物だから。


 しっかし夢とはいえ憧れのアリスで個人事業主として登録することになるとはな。派遣、日雇い、アルバイト、手伝い。幾つも掛け持ちし馬車馬の如くやって来たが個人事業主になるのは初めてだ。


 笑えるな。経験したことがないだけに登録はセンサーでとかおかしな設定は夢らしい。指紋や静脈網膜はセキュリティーだったはずなのだが持ち合わせた知識からではこの辺りが私の限界なのだろう。チョイスしそれっぽく仕上げったって感じの遣っ付け仕事を夢でもやってしうまところが私らしい。ホント夢でもかって話だ。


 しっかし初めてといえば、新規登録の申請が紙だったてのにも驚いた。


 不思議な感覚だった。筆ペン、鉛筆っていうんだったけかな、初めて貴重な資源紙に字を書いたが、夢の中だからこそできる超級の贅沢。質感がリアル過ぎてどう反応して良いのか体も頭も困り過ぎてパンク寸前だった。ホント夢なのにって話だ。


 飛行機のシート。入星審査の椅子。乗り物。転籍の手続きと説明。登録申請と所属申請。何だか座ってばっかの夢だな。


 パルパイオニアもそうだけど、パルパイオニアがハローワークを兼ねてるっていう設定も笑えるな。ギの記憶とアモンの記憶が混ざりまくった、夢ならではの御都合主義な展開もここまで来ると清々しさすら感じてしまう。

 まぁ~登録だけでもしておくかって流れで、新規登録カウンターに並び直したのは夢でも天晴、大正解と言えるだろう。

 転籍の手続きと説明をしてくれた受付の男性は良くも悪くも事務的だったが、新規登録カウンターの受付の女性は記入の際に手が止まると直ぐに声を掛けてくれたりととても親切でもう少し若かったら好感だけでは済まなかっただろう。ホント夢だけど良い出会いだ。


・・・

・・


 長いな。


・・・

・・


 待たされる夢ってのもあるんだな。


・・・

・・


 ホント夢でも長いな。


・・・

・・


「オイラセさん。お待たせ致しました。一番のカウンターまでお願いします」


 待ちくたびれてウトウトと船を漕いでいる間に、審査の結果が出たみたいだ。書類さえ整っていれば誰でも登録できると聞いたことがあったのだが、……夢だしな。



「転籍手続きは完了していましたが、居住地、緊急連絡先等が未登録でしたので、PPユートピアシティー南支部を臨時の居住地、緊急連絡先にしておきました。居住地が決まりましたら再登録しますので担当の私までお願いします」

「担当?」

 もしかして、これは私の願望が形になったのか?

「はい。当支部のフリーランス部隊の責任者と受付は私の仕事です。つまりっ! オイラセさんの申請は審査の結果。通りました。おめでとうございます。パチパチパチパチ」


 拍手しながら口でもパチパチですか。流石は夢、何でもありだな。

「ありがとうございます」


「いえいえこちらこそありがとうございます。これで仕事が始められます」

「え?」

「フリーランスはエリート部隊じゃないですか。フリーだからといって誰でも自由にはいどうぞって訳にいかないじゃないですか。一つ二つ何かが特化してるだけではダメなんです。オールマイティーに卒無く何でも熟せる都合の良い万能な丈夫で取り合えず動いてから考える系の人が好ましいのです。そういう人ってそういないじゃないですか」

 夢の中でストレートに馬鹿にされたのは始めてだ。きっと疲れてるんだろうな。

「体が動く限りは働くつもりですがブラックは勘弁してください」

「はい。お任せください。アリスはギとは違います。頑張らない。無理しない。程良く適当。PPの三大理念の一つ『良い案配』は絶対厳守。掟を破ると放逐されることもあるとかないとか、そんな感じになっていますので、安心してお任せください。最後になりますが、私のことはキャッシー部隊長、キャッシー班長、キャプテンキャッシー好きな様に呼んでください。以上です。解散あっ! PPカード渡してませんでしたね。こちらが、PPカードです。無くしても気にしないでください。所属する支部まで勝手に戻って来る優しい仕様になってます。昔は二十万から三十万の再発行手数料をがめつくとっていた。おっと、登録情報に間違いがないか確認してください」

「はい」

 我ながら地味な夢だな。


 どれどれ。

 所属:パルパイオニア・ユートピアシティー・南支部・FL

 階級:S

 管理番号:PPUCSB-FL-S-#001

 居住地:(仮)パルパイオニア・ユートピアシティー・南支部

 緊急連絡先:(仮)パルパイオニア・ユートピアシティー・南支部

 

 連絡事項

  ①二週間以内に居住地&緊急連絡先の

   正規登録手続きを行ってください。

   期限切れの際は自動的に未登録として

   処理されます。

  ②各種ステータスの確認は

   専門の窓口&所属する窓口で確認してください。

   管理番号&両目&右の親指または当カードが

   必要になります。

  ③当カードは所有者の死亡または放逐が確認されるまで

   自動的に更新され続けます。

   更新の手続きは各種窓口でも対応が可能です。

  ④知る権利よりも個人のプライバシーの方が大切。

   守秘義務機密情報漏洩の責任は個人ではなく団体。

   何時でも何処でもニコニコPPカードの提示が

   可能な様に必要最低限の情報のみを選択。

   PPの三大理念の一つ『何より命』は絶対厳守。

   掟を破ると放逐されることもあるとかないとか。

   この連絡は音読黙読何れかに関わらず

   読み終わると同時に全て消去されます。


 おっとホントに消えた。


「大丈夫そうですね。それでは、FフリーLランスSスターティング#ナンバーOO1ダブルオーワンオイラセケイリュウさん。貴方と私まだ二人しかいませんが宜しくお願いします。以上です。解散」

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