ボディバッグ②
「ケーリューさん。今日はこの
赤茶け荒涼とした大地が夕日に染められ燃えている。
三六〇度何処を向いても岩岩岩。岩肌むき出しの砂漠しか広がっていない。
やっと、やっと、やっと。やっと憧れのアリスに来れたというのに。…………まだ…………岩しか見ていない。
ハァ~。
しっかしぃー本当にそっくりだな。デジタルフォトで見たギのハマダに。
アァ―――。
大地が赤いや…………。
「ケーリューさん、聞いてますか? ケーリューさん!」
「ぅん? ……うわぁっ! ア、アステリアさん。お、お脅かさないでください。」
右の袖を引っ張られ振り向くと、アステリアさんの顔が目の前にあった。
カ、可愛い……じゃない、そうじゃない。近い近い距離がっ!
「もうぉー、何言ってるんですかぁっ! ビックリしたのはこっちです。急に大きな声出さないでください。」
長い耳を落ち着きなく動かすアステリアさん。
あぁー吃驚した。まぁーだ心臓がバークバク言ってる。
呼吸を整えつつ、アステリアさんの耳を観察する。
……確かに良く聞こえそうだ。
ウサギの聴覚はヒトの何倍だろう?
イヌは一千倍とか一億倍とかだったよな。あっ、それ嗅覚か。
ウサギの嗅覚って、
「ケーリューさん。……ケーリューさん? …………あのぉー、何で無視するんですかっ? ケーリューさんケーリューさんケーリューさん!!!」
・・・
・・
・
激しく揺さぶられ少し気分が悪い。
何かを考えていたはずなのだが思い出せない。
「ウサピョン。ケーリューさんのミックスベジタブルチップス、やっぱり美味し過ぎます。特にこの真っ赤ないつ食べてもキョーニンジンは絶品です。」
「僕は、
アステリアさんとウサピョンがボリボリと美味しそうに食べている物。
それは、私の食料。ボディバッグに入れギからアリスに持参した貴重なニッポンの食料だ。
何故二人がミックスベジタブルチップスを食べているのか。
それは、三日前。
アリス七日目の夕食時だった。
朝食昼食夕食、三食コークやアイアンオルの生活に飽きた私はボディバッグからミックスベジタブルチップスの袋を取り出しつまんでいた。五日目の夕食時から一本二本とつまんでいたのだが、七日目の夕食時にミックスベジタブルチップスが脚光を浴びることとなった。
「ケイリュウはいったい何を食べているのですか?」
「あぁ―――ケーリューさんだけずるいです。食料は平等が基本なのです。同じ釜の飯は平等に分け合うべきなのです。私にも一口ください。はい、あ―――――ん……あのぉ~ケーリューさん?」
「あ―――ん。僕も口を開けて待っているのですが。馬鹿ですか? 阿呆ですか? この状況から何をすべきか求められているのか分からないのですか? 大丈夫ですか?」
あ―――んって、食べたいって意思表示だったのか。アイアンオルを美味しそうに食べてるからてっきり鉱物が好物なのだとばかり思っていた。食べたいなら食べたいと一言言ってくれれば良いものを……。
「お好きなのをど」
「「あ―――――ん。」」
「…………う……ぞ。」
何だこの状況は? ……こ、これはまるで…………雛に餌を与える親鳥。
ベジタブルチップスを食べていただけで阿呆呼ばわりされてしまったが、餌付けに成功した瞬間だった。
「私の繊細な
アステリアさんは、立てた指を三本から二本に減らし、目を合わせようとしない。
「円滑なコミュニケーションには伝達力と傾聴力が求められます。即ち報連相、報告連絡相談です。セイリュウに相談します。アステリアが二本なら僕は何本ですか? 恩を感じ遠慮してしまう気持ちを大切にしてください。相談は以上です。」
…………素直に食べたいと言えないものかね。
ボディバッグからミックスベジタブルチップスの袋を取り出し袋を開ける。
命の恩人に礼を尽くさずして敬意をいつ示す。それに、寛容であれだ。ウサピョンの分かりやすいタイミングに便乗した。
「セーリューさん。キョーニンジンチップスはあと何本ありますか?」
「カマクラニンジンチップスは残り何本ですか? 濃色以外のニンジンも含め速やかに答えてください。」
難しい質問が来てしまった。どう答えたらいい。信じて貰えるだろうか。ボディバッグに戻すと食べ終わっていても新品の状態に戻るみたい。……無理だろうな。
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