ボディバッグ①
「ケーリューさんのそのギャップバッグなのですが。」
「ギャップバッグ?」
「はい。初めて見た時からずっと気になっていたのですが。」
「えっと、このバッグのことですよね?」
「はい。」
「普通のボディバッグですよ。これ。」
「ボディバッグ? ……あっ、あぁ~なるほどなのです。ケーリューさんも物に愛着を持ちたい派なのですね。私と一緒です。ちょっと待ってってくださいね。」
「それは?」
「ルルカちゃんです」
「は?」
「ルルカちゃんです」
「ケイリュウ。そのマーリー人形はルルカ・カコナーといってアステリアの友達です」
「ケーリューさんのボディーちゃん? 君? は、バッグだから名字がバッグなのですか?」
「あぁ―――、……そ、そんな感じですかね。」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「この中には私の全財産が入ってます。」
憧れのアリスへ移住するにあたり身辺を綺麗さっぱり整理した
女性にはてんで縁の無い人生を送って来た彼は、......
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1:プラスチックの衣装ケース 大3個
(判断基準:大は小を兼ねる。しかない)
2:ローテーブル 小1卓
3:ベッド シングル1台
4:調理器具一式
5:食器一式
6:掃除用具一式
7:小物雑貨など他
※家電は全て備え付け。
※テレビの画面は壁に映し出される。
※冷蔵庫は壁に埋め込まれている。
※照明は見当たらないが明るい。
※バスとトイレだけは別が拘り。
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......アリスへの移住を見越し、物は持たない。寝れればいい。自炊できればいい。バスとトイレは絶対に別々がいい。を、モットーに今迄生きて来た。
彼の身辺整理とは、ほとんど無いに等しい家財道具と税金と住民票と戸籍。実家の家族や親戚。あとは数少ない友人やバイト先で知り合った知人との関係ぐらいなものだ。
バイトを数多く掛け持ちし馬車馬の如く働き収入はそれなりに良かったが社会保障は最低限だった。だが、税金の滞納はなし。
部屋に備え付けの視聴する機会など年に一回でもあれば多い強制的に電波を受信するあるだけで税金のように支払いが生じる既得権益の塊へも、料金の滞納はなし。
実家の両親や数少ない友人へはボイスメールで挨拶を済ませ、数多くのバイト先へは直接足を運び頭を下げた。
不要な物は金に換え、バイト代の振り込み専用に作った沢山の口座は残金を確認し破棄した。
現金は緊急用に少しだけ手元に残し後はミルキーウェイギャラクシー最大手の
バンクギャラクシーの謳い文句は、”安全信頼便利のバンクギャラクシー。入園入学冠婚葬祭のバンクギャラクシー、ミルキーウェイギャラクシーに住むアナタにこの一枚をバンクギャラクシー、笑顔の窓口ローンの相談はバンクギャラクシー”などが有名だ。
因みにロゴマークは、”ミルキーウェイギャラクシーボルテックス”黒地に光り輝く色鮮やかな天体を模した無数の点が渦を巻くように配置された絵柄で、ミルキーウェイギャラクシー連合が成立した三四五六年一〇月二四日の配置が使われていることで有名だ。
「私も一緒です。私もギャップバッグで持ち歩いてます。はっ!?……キャロットちゃん。ニンジンちゃん。キョロバッグちゃん。……うぅ~ん……あっ、ジンバッグちゃん!!響きが良いかも、あっ、でも男の子っぽいかぁ―……」
アステリアは、ウサピョンが背中に背負った大きなトウモロコシ型のカバン(リュックサック)に、巨大なニンジン型のカバン(リュックサック)を預かって貰っていた。カバンを引きずりながら歩くアステリアをウサピョンが不憫に思い預かったのが切欠となった。
考え込みながら名前を連呼するアステリアを目の前に。
アステリアさんはいったい何の話をしているのだろう?
アステリアさんがカバンを持ち歩いている?
ジンバッグ。ジンバック、ロンドンバック。有名なカクテルの名前の一つだったような……。
アリス一筋の敬隆は酒を口にしたことがなかった。スーパーやコマーシャル、通販サイトで見かけ名前を知っているだけだった。
「……可愛さマックス重視のキャロット・バッグちゃんが良さそうです。私、決めました。私もケーリューさんを真似してギャップバッグにキャロット・バッグって名前を付けることにしました。一緒ですね。エヘヘヘヘ」
「お、おぉ」
否定したいこと聞きたいことが沢山あった敬隆だったが、「か、可愛い。……眩し過ぎる、これって反則だろう。」と、アステリアのはにかんだ笑顔を前に、何も言えなくなっていた。
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