ここはアリス
タブレットで説明書を起動し確認した。
説明書によると、GPSからAGPSへ同期を変更し、タブレットの地図情報と機能を最新の状態に更新すると、現在地が正しく表示されるとあった。
因みに、AGPSとはアリス・グローバル・ポジショニング・システム。ギのGPSのアリス版を指す。
変更し更新した結果。
「マーディム渓谷?」
ここは、渓谷なのか?
改めて周囲を見回してみたが、丘っぽい物が幾つかあるだけで、山っぽい物は一つも見当たらなかった。
試しに、タブレットの地図を今の半径二五メートルから一〇〇、三〇〇、五〇〇、一〇〇〇、二五〇〇、五〇〇〇、一〇〇〇〇、二五〇〇〇、五〇〇〇〇、七五〇〇〇、一五〇〇〇〇、四五〇〇〇〇、一〇〇〇〇〇〇と縮小してみた。
・・・
・・
・
「……クリヴィッツクレーター。」
ここがマーディム渓谷なら、そう来るよな。
「…………ボンネビルクレーター。……ティラクレーター。」
ユートピアシティーへは、リニアカプセルでティラ駅まで行ってマッハカプセルに乗り換えるんだったな。……ティラ。ふむ。
「………………………はぁぁぁ―――!? グセフクレーターだぁーっ!? ここがグセフシティーな訳ないだろうっ! 何処からどう見ても砂漠だろこれ。あああぁぁぁあのアキバ店員不良品をっ……ギでの最後の思い出が、これ。これって、……………………アリスに移住して良かったぁ~。悪く言うつもりはこれっぽっちも無いけどさ。ギ、なんて所詮こんなもんだ」
だからこそ、夢だった憧れのアリスに星間飛行船でぇ―――あ……あれ? …………おかしいぞ。建物も道も無い。公園も噴水も木も水も無い。覆ってるはずのシェルターも無い。ここはシェルターの外だ。
「私はどうして平気なんだ?」
呼吸してるし、肌も眼も痛く無い。それに腹までへってる。……うん!?腹がへるのは健康な証拠じゃないか。
ボディバッグから、業務スーパー【エトウトウカドウ】で購入した業務用割れ割れチョコレートの袋を取り出し、一粒口へ放り込む。
う~んビタァ~。やっぱチョコはこれに限るねぇ~。カカオ含有率九八パーセント。これだよこれ。……栄養補給完了ぉーっと。
業務用割れ割れチョコレートのファスナー式の口を閉じ、ボディバッグへ戻す。
おかしい。もっとパンパンに膨らんでたよな? う~む。……ちょっと待て、違うだろう。今はボディバッグじゃない。それどころじゃないだろう。
・・・
・・
・
これから、どうしたらいいんだ? サッパリ分からない。
・
・
・
・
・
地図機能がおかしいだけで、タブレットは普通に使えた。
救助マニュアル。
遭難マニュアル。
アリスの常識一〇〇。
アリスの常識非常識。
アリスでやってはいけない九つ。
二時間程読み漁ってみたが打開策は見つからなかった。
半分自棄になり地面に大の字で寝転がる。
ぁえ―――? でも、でもまさか。ありえない。いや、そんなこと信じない。
私は信じない。
「ここはアリス。」
アリスだ。
アリスで間違い無い。じゃないと私は、私は、私は。
「ハァ~。地面の寝心地は如何ですか?」
私は、はえ?
心の中で暴れていると、突然女性に話し掛けられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます