第5話 神屠〈カント〉

話を終えた紫崎さんはいたたまれなさそうに私に会話を振ってくれた。

「結界内で起きた事象は結界を解くとある程度は元に戻るの。⋯流石に死んだ人は死んだ結果だけ残るから不審死になるけれども。」

そのことを聞いた私は優希も死ななかったら戻ってスクープ!スクープってはしゃいでたのかなぁって思って、そうだったらよかったのになぁって涙が自分の頬を伝うのを堪えきれなくなった。


そしてここまで口を開かなかった男の人が

「お嬢。そろそろ結界解くぞ。」

そう言うと張り詰めていた空気が元に戻る感覚があった。そして空気が元に戻るとともに傷ついていた腕も制服も普通に元通りになっていた。

「すごい…。」

私は経験したことがないことに口が塞がらない。

「こんな事で驚いていてはこれから大変よ?」

「…へっ?」

ポカーンとする私に紫崎さんはくすくす笑いながら

「もっと大変なことに巻き込むつもりだから。」

と蠱惑的な笑みで微笑んでいる彼女が居た。

「えーっと⋯紫崎さん?」

「凜でいいわ。」

「じゃあ…凜。凜達って何と戦ってるの?」

「神」

「えっ!?神様!?」

私はびっくりしてあれだけ流していた涙が引っ込んでしまった。

「驚くことはないわ。昨日あなたが倒したのも神よ。」

私はおずおずと凛に聞いてみる。

「神様って倒して平気なの?」

「荒神は基本平気ね。普段戦ってるのはこの荒神よ。刀あったでしょう?あれは私達の仲間にしか出せない自分専用の刀なの。」

普段戦ってるのはというのは普段は戦ってない神様とも戦ってるのかな?

そう思ってたら顔に出てたんだろうか男の人がため息をついて

「俺達は神から神屠<カント>と呼ばれている。そして神屠を良く思わない神が圧倒的に多い。その中でも奇魂寄りの神は特に神屠を消そうとしてきてる。つまりお前にとって神様は大体は敵になったってこった。」

そう矢継ぎ早に男の人から言われる。


「⋯ついでに名乗って無かったから名乗ってやるよ。俺は上條蛍。お嬢の補佐役だ。歳は20。」


20か⋯。お兄ちゃんより蛍さんは歳下だなぁ。お兄ちゃんちょっとジジくさいとこあるから蛍さんくらいが歳相応⋯と。


しみじみそんなことを思っていたら凜と蛍さんは話を進めていたらしい。私は次の休みの日に神屠の本拠地〈杜柱<とはしら>〉へ行くことになってしまっていた。

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