十和里山伝説「紡ぎの時計」第三十二幕 無償の愛とは

十和里山伝説「紡ぎの時計」

作者:神崎 小太郎

第三十二幕 無償の愛とは





※誤字脱字・構文など

> 突然、ドアが開いて、声がした。俺は驚いて目を向けた。その顔は小百合さんだ。そこには、メガネをかけた美しい女性が立っていた。野口さんの車を借りて、いったん我が家に帰ったと言っていた。

⇒「その顔は小百合さんだ。」は誤って入ったのかな?

 ですが「小百合さん」という言葉がないと「野口さんの車を借りて、」をしたのが誰だかわからないですよね。

> 突然、ドアが開いて、声がした。俺は驚いて目を向けた。そこには、メガネをかけた美しい女性、小百合さんが立っていた。野口さんの車を借りて、いったん我が家に帰ったらしい。

⇒かなと。「帰ったと言う。」でもいいのですが、会話文を挟んだ続く文に「彼女はそう言って、手に持っていた花束を俺に差し出した。」で「言って」と書いてあるので、「と言う」だと単調になりますので、例文では「らしい」を採用しました。


>薫の手を握り返してほしかった。

⇒「薫の」は要らないですね。ここまで「薫」を連呼しているので、なくても「薫の手」であることは伝わります。


> 小百合さんはそう言って、俺の肩に手を置いた。その手は温かくて、優しかった。

⇒小百合さんが言ってからかなり文章が進んでいますよね。ここは

> 小百合さんは俺の肩にそっと手を置いた。その手は温かくて、優しかった。

⇒という形ですね。


>男はそれを承諾したが、神々は主人公が隠している秘密に気づかなかった。次女は実は妻ではなく愛人の子だったのだ。

⇒次女は養子であることがすぐ前に書かれていますから、「実は妻ではなく愛人の子だったのだ」と書いても「そりゃあ養子なんだから妻の子ではないよな」となります。

 ここは単に、

>男はそれを承諾したが、神々は主人公が隠している秘密に気づかなかった。次女は愛人の子だったのだ。

⇒とします。「次女は実は」とすると助詞「は」が続くのであまりよろしくありません。


>その心に打たれて、俺は一瞬言葉を失い、涙がこぼれそうになった。

⇒「涙がこぼれそうになった。」だと「涙をこぼしなくなった」という含意があるため、ちょっと勇希くんが冷めているように見えます。

>その心に打たれて、俺は一瞬言葉を失い、思わず涙がこぼれた。

⇒とすれば小百合さんと根本さんの献身に対する気持ちがあふれたように見えますよね。





※寸評

 いよいよ「命をつむぐ時計」を巡る話になりそうですね。

 これからが最後の山になりそうですから、しっかりと読み手を物語世界へといざないましょう。

 あと、もう少し勇希くんの感情をストレートに書いてもいいかな、と思います。

 小説を読む人は、感情を揺さぶってほしいと考えています。

 主人公がドライな性格だと、没入感は乏しくなるのです。

 マンガの『ONE PIECE』がなぜ人気なのか。主人公ルフィを含めてキャラクターが「感情的」だからです。

 キャラが大涙を流すシーンで読み手も大泣きします。

 だから、読み手の感情を揺さぶりたければ、登場人物とくに主人公がある程度感情をむき出しする場面が欲しいのです。

 今は愛する薫が生死をさまよっているのですから、いつもクールな性格でも感情的になってよいはずです。

 なのでここでは勇希くんが「泣く」ことで、読み手にも泣いてもらいます。

 そこから始まる奇蹟の物語をより感動的にするためです。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る