十和里山伝説「紡ぎの時計」第二十七章 父娘の出会い

十和里山伝説「紡ぎの時計」

作者:神崎 小太郎

第二十七章 父娘の出会い





※誤字脱字・構文など

>部屋の灯りが川面に映り込んで、オレンジ色にキラキラと揺れていた。そんな幻想的な光景に見とれていると、思いがけずロビーの扉が開いてくる。

⇒「キラキラと揺れている。」「思いがけずロビーの扉が開いた。」ですね。時制を考慮すると、景色を見ているのは現在進行形だから「揺れている。」、「ロビーの扉が開く」のが今だから「開いた。」です。動詞はこれから起こることを表した品詞なので、今まさに開いたのであれば「開いた。」が正しいんです。文の終わりに「開いた」のであれば「開く」になります。


> 冬の北風に負けじと、小柄で可愛らしい女性が小走りで現れてきた。

⇒「現れた。」ですね。ここも補助動詞が余計ですね。


>薫も寄り添ってきて、黙ったまま頷いていた。

⇒ここも補助動詞ですね。「寄り添ってきて」と補助動詞「てきて」を使って、すぐに「頷いていた」と補助動詞「ていた」を使うと動作の方向性が散漫になります。

 「寄り添ってきて」なら「頷く」と本動詞だけにするとよいですね。

>薫も寄り添ってきて、黙ったまま頷く。


>俺と目が合った途端に、にっこりと笑ってくれた。

⇒ここも補助動詞ですね。「薫が勇希に笑顔を与えた」のであれば「笑ってくれた」でもいいのですが、ここはどちらかというと「にっこりと笑っていた。」としたほうが勇希が気づいて笑ったというより、勇希が気づいたときにはすでに笑っていたというニュアンスになります。勇希の視線に気づいて笑ったのであれば「笑ってくれた」でもかまいません。


>大人になるにつれて、自分のふがいない性格に気づき悩んできた。

⇒あとで「不甲斐ない」と漢字で表記しているので、ここも漢字でよいでしょう。


>もっと、素直になり、上手に自分の気持ちを表現できれば良いと思っていた。

⇒視点保有者の勇希くんの心の中ですから、「と思っていた。」は蛇足ですね。「はずだ」のような推測の言葉に置き換えてみましょう。

>もっと素直になり、上手に自分の気持ちを表現できれば良いはずだ。





※寸評

 全体的に補助動詞を使いすぎかなと感じます。

 動作の方向性を表すのが「補助動詞」の役割で、それを補助動詞で補うという発想は悪くないのですが、もう少し本動詞が本来持つ方向性を信じて上げてください。同じ方向の補助動詞は蛇足です。

 物語としては先を前に読んでいますから、なかなか正しく判定できないのですが、場面転換から若干強引かなと思わなくもありません。

 車で宿へ向かい、宿で小百合さんと会って根本さんと対面、各々の部屋に行って食事は小百合さんの部屋で一緒に。そしてお風呂へという流れです。

 まあこの一話で表すには、このくらい詰めないといけませんが、やや慌ただしく強引かなという印象を受けます。

 この一話で重要なのは、根本さんと小百合さんの対面であり、勇希くんがプロポーズを決意するところだと思います。

 このふたつに焦点を絞って書くと、もっとよい表現になりますよ。




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