十和里山伝説「紡ぎの時計」第十七幕 藁の糸②

十和里山伝説「紡ぎの時計」

作者:神崎 小太郎

第十七幕 藁の糸②





※誤字脱字・構文など

>床につく前に人知れず酒を飲むことにする。

⇒「人知れず酒を飲んだ。」でよいでしょう。「人知れず」は「密かに」の意味ですから。


> なのに、悔しさばかり込み上げており、いつまで経っても眠くはならない。

⇒ なのに、悔しさばかりが込み上げ、いつまで経っても眠く(は)ならない。

 でよいと思います。補助動詞「〜ており」は「〜ている」の丁寧語です。そこで丁寧さを省くと「悔しさばかり(が)込み上げていて、いつまで経っても眠く(は)ならない。」とちょっと噛み合わないですよね。


> しかし、その代償として、自分の命を差し出さすという契約を結ばされた。

⇒「差し出さす」はちょっと古い言い回しなので現代語では「差し出させる」を用います。ただ、主人公である根本さんが古い人であるので、読みやすさよりも演出効果を考えれば「差し出さす」でも問題はありません。その場合は「自分の命を差し出さす契約を結ばされた。」と「という」を削ったほうがいいですね。


>優奈の病気が小安状態になるのを待ち、しばらく我が家で一緒に過ごすことにした。

⇒「小康状態」が一般的ですね。小康の類語に「小安」もありますが、使われることは稀です。


>家族の皆で集まって、嵐の前のような楽しい時間を楽しんでいた。

⇒ここは「楽しい時間を楽しんだ。」ですね。「〜ていた」は楽しんだ最中を指します。


>僕は又もや命のはかなさに気づいて、涙で頬を濡らしながら保育園を後にした。

⇒こう書くと「僕は」が「保育園を後にした。」が成立して根本さんひとりが保育園を出てきたように読めます。それが狙いならいいのですが、もし優奈ちゃん一家とともに帰ったのであれば「家族を連れて保育園を後にした。」ような文になります。





※寸評

 根本さんと優奈ちゃんとの思い出作り。儚い命で目いっぱい今を生きる姿が健気に映ります。

 このあたりは時間の推移と優奈ちゃんの状態の落ちつきで訪れた冬のある一日をクローズアップしています。

 それが効果的に演出されていますね。

 細かな文の食い違いはあるものの、全体としては大きな流れに乗せて、物語を叙述できています。

 このささやかな日を経験して、読み手はこの先を覚悟しなければならない。

 このあたりもうまい演出ですね。




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