平安の世、陰陽師と姫君 3

陰陽師の呪縛 〜男を必ず落とす超モテ女の秘密〜

作者 雨 杜和

第一部 平安時代「深草の女房日記」前編

平安の世、陰陽師と姫君 3

https://kakuyomu.jp/works/16816452219750143893/episodes/16817330650031989823




※誤字脱字・構文など

(1)> これまで、すべての求婚者に姫は色良い返事を出さなかった。

⇒「姫は」の位置が一読で理解しづらい位置にあります。これを読みやすくするには、

(2)> これまで姫は、すべての求婚者に色良い返事を出さなかった。

 としますが、あえて「読みづらい部分を作る」という上級テクニックが存在しますので、それを使うかどうかですね。読み慣れている人には有効なんですけど、初見さんには伝わりづらいのが弱点ではあります。


>あの純情な法光だ。深読みして思い悩むにちがいない。

⇒この時点までに法光が「純情」であるとは書かれていませんね。

 ここで初めて「純情な」の形容動詞を用いるのであれば、「純情そうな法光のことだ。」のように伝え聞きの形で書くのが望ましいですね。「純情な」を使いたい場合は、たとえば「あの純情な返歌を書く法光(のこと)だ。」と書けば、深草の女房がそう思っている根拠がわかるのでオススメです。


>「姫さま、お相手の方は、もう必死でございますよ。今さら焦らす必要がございますでしょうか」

⇒古文臭い言い回しとしては「今さら焦らす必要がございましょうか」と「ございます」を直接活用しましょう。「ございますでしょうか」は現代ぽい言い回しでかつ二重敬語とされています。

 「ある+だろうか」を丁寧にすると「ございます+でしょうか」となります。

 つまり「あるだろうか」の敬語が「ございますでしょうか」です。しかし、「ある」を「ございます」に、「だろうか」を「でしょうか」と一文で二つの敬語が発生するので、二重敬語と呼ばれることもあります。

 それに対して「あろうか」を敬語にすると「ございましょうか」になります。こちらは一語をそのまま敬語にしたので二重敬語にはなりません。


>「深草の女房どのにお取り次ぎを願いたい」

⇒ここも古文臭くするなら「お取り次ぎ願いたい」と助詞「を」を削りましょう。


>その様子をうかがう深草の女房が、つまびらかに姫に伝えているとは思いもよらなかった。

⇒ここは深草の女房の三人称一元視点なのですが、「思いもよらなかった。」は「法光が」であるから視点が剥がれてしまっています。

 「思いもよらなかった(だ)ろう。」と推量形にすると女房の視点が剥がれません。



※寸評

 古文臭い言い回しを考えるなら、漢語よりも和語をふんだんに用いるようにしましょう。

 知識人層では漢文をたくさん読んでいるでしょうから、ある程度漢語が混じってもかまわないのですが、和歌においても大和言葉の美学がありますから、なるべく和語を用いるようにすると、平安の時代感が出てきますね。

 言い換えが思いつかない場合は、漢語を使ってもかまいません。

 あくまでも「空気」が醸し出せていたらそれでよいのです。


 これは第一部の平安時代編でのことなので、全文というわけではありません。

 少し意識してみると、最適な表現が見つかるでしょう。



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