12

臨海22世紀

作者 長宗我部 芳親


夢見るガイノイド編

12



構文と誤字脱字など

> と思えば、彼の隣に輪郭が浮かぶようにして現れたのは、三メートルを超えるも体躯の、獅子のようなたてがみを持つ全身が継ぎ接ぎの狼だった。

⇒「三メートルを超える体躯の、」ですかね。



> ミオンは恨み辛みを込めてシナプスロードを睨むが、彼はどこ吹く風といった様子だ。彼は改めて二人の前に足を運ぶ。

⇒「彼」が直近で二回出ているので、前の「彼はどこ吹く風といった様子だ。」の「彼は」を省きましょう。



>お前さん達が起こしたことで、体内に仕込まれた核が発源して死んだんだ。

⇒「発現して」ですね。ただ、妙に「発源」の意の2には近いのかな?

⇒はつ‐げん【発源】 1 みなもとから川などが流れ出ること。 また、そのみなもと。 2 物事の起こるもとをなすこと。

⇒でも基本は「発現」ですね。



(1)> 情けなどは一切無用、二人の意識はシナプスロードの片手に握られたリモコン一つですぐに途絶えた。

>

(2)>「アポトシス、こいつらを外に運ぶのを手伝ってくれ。その後は魚に任せればいい」

>

(3)> 主人に命令を下されるや否や、アポトシスはコクリと頷き、だらんと力の抜けた様子の二人を咥え込んだ。

⇒(1)でミオンとセーラの意識が途絶えたわけですが、その後の(2)(3)はどの視点から書かれているのでしょうか。本編はいちおうミオンに焦点を合わせた三人称一元視点ですから、この文章に入る直前まではミオンに焦点を合っていました。

 もしこの部分を自然に読ませたいのであれば、この「12」はミオンにもセーラにも焦点を合わせないほうがよいですね。それこそ「シナプスロード」に焦点を当てていたほうがよいくらいです。でも最善はどこにも焦点を合わせない普通の「三人称視点」ですね。



> 幾つもの、何百もの瓦礫が雷嵐の如く荒れ狂う激流に攫われ、瞳に映ったものは一刹那で過ぎ行く過酷な世界だった。

⇒「幾つもの、何百もの瓦礫が」はちょっともったいをつけすぎかなと。ここに注力すると比喩である「雷嵐の如く」が弱まってしまいます。単に「何百もの瓦礫が」でよいですね。

 「一刹那で過ぎ行く過酷な世界」は「過」の字の重複です。これは意味が若干違うのですが、場所が近すぎるため錯誤しやすく重複を避けたいところです。たとえば「凄絶な世界」のように言い換えてみましょう。



> 彼らは二人を離そうと口を開くが、次の瞬間、横殴りにやってきた廃車に核を打ち付けられ、全身が砕け散った。

⇒「横殴りにやってきた廃車が核に打ち付けられ」「横殴りにやってきた廃車が核に打ち据えられ」ですね。



> 急流で翻る自転車の破れたホイール、真っ黒なテレビ画面。

⇒ホイールはタイヤを巻きつけているところですから「自転車の破れたホイール」はちょっとイメージできません。ロードレーサーでディスクホイールを使っているものがあるのですが、その場合ならまあ「破れた」と言えなくもありません。

 また「真っ黒なテレビ画面」と書かれると「通電している」ように感じられます。「真っ黒なテレビ」でよいでしょう。



> 彼女は自らがシデ潮に流されていることを理解すると同時に、その恐怖で今にも泣き出してしまそうだった。

⇒「泣き出してしまいそうだった。」ですね。



> しかし、だいぶ距離が離されている。

⇒「だいぶ距離が離されている。」は「離」の字が重複しています。ここは単に「だいぶ離されている。」または「だいぶ離れている。」でよいでしょう。



> 十分な加速を伴っていたセーラはミオンを通り過ぎ去っていく。

⇒「通り過ぎる」「過ぎ去る」が混ざってしまったオリジナル動詞になっています。ここは「セーラはミオンを通り過ぎていく。」でよいでしょう。「過ぎ去っていく」は「流されていく」のように続きの文に合わせて入れてみましょう。



> セーラの決死の呼びかけも虚しく、ミオンの姿は一層小さくなっていく。

⇒「決死の」という表現はちょっと軽いかなと思います。「死を決して」いるわけではないので、「セーラが振り絞った呼びかけも虚しく、」あたりでよいのではないでしょうか。




※構成と展開について

 視点の移動が目立っています。これを回避するには「本話だけ」単なる「三人称視点」にするか、シーンを明確に区切って三つの「三人称一元視点」を持たせるかですね。ただ「シナプスロード」に焦点が合ったあと、シナプスロードもおらず、意識のないミオンとセーラを外側から描写している部分があるので、そこは単なる「三人称視点」にせざるをえません。

 まず「ミオン」の一元視点、次に「シナプスロード」の一元視点、「誰も視点を持たない」単なる三人称視点、セーラの一元視点の順に流れていきます。

 一元視点のパートごとに「シーンの変わり目」を知らせる文字列を入れておくと、この流れになっていてもわかりづらさはある程度解消されます。

 私は「◇◇◇」で区切っていますが、区切り記号は書き手によってそれぞれです。一度「シーンの変わり目」記号を決めたら、他の作品でも同じものにしておくと、読み手の皆様が戸惑わずに済みます。

 ただ選考さんに「視点がブレている」と思われてしまうので、できれば視点を固定したいところです。でもそれでは本話は書けません。

 だから本話だけでも単なる「三人称視点」に統一するのが、小説賞での最適解となります。



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