06

臨海22世紀

作者 長宗我部 芳親


海中退治譚編

06



構文と誤字脱字など

>今に電車との距離が数メートルにも満たないところで、ミオンとセーラは身投げをするかの如く飛び込む。

⇒「身投げ」という単語は読み手にあまりよい印象を与えないので、「身を委ねるかの如く飛び込んだ。」くらいの表現にしたほうが穏当ではあります。



>「リンク切れか。セーラ、足元に気をつけて」 

>

> ミオンとセーラは階段を下っていった。

⇒これだとセーラがQRコードの結果を聞かずに階段を降り始めたように受け取られます。

 少なくともミオンの指示を受けてから降りていったほうが丁寧だと思います。



> 階段を下ていくにつれて、一段とひんやりとした水が二人の体を包み込んだ。

⇒「階段を下っていくにつれて」かなと。ちなみに「上下」なのか「昇降」なのかで「のぼる・くだる」の漢字が変わりますので、意識して使い分けてくださいね。



>そのうちの先端が、へらの形の一本が二人を潰しにかかる。

⇒ここは読点の打ち方ですね。

>そのうちの、先端がへらの形の一本が二人を潰しにかかる。

⇒ですね。



> この下位宇宙苔は下位種のようだから、きっと……、

⇒「この宇宙苔は下位種のようだから、」ですね。



> 腰元まで伸ばした黒い髪をなびかせ、無表情の少女は廊下を渡る。

⇒「腰元まで伸ばした黒い髪」だと、少女の意志で伸ばしているように受け取られます。

 男の目から見れば「腰元まで伸びた黒い髪」と見た目だけを書くことになります。

 「伸ばした」と「伸びた」で視点が少女にどこまで干渉しているかが違ってくるのです。



>「――相変わらず、趣味が悪いですね。シナプスロード」

>

> 少女は解剖に無我夢中の、アフロ頭の男をシナプスロードと呼んだ。

⇒少女の言葉で「シナプスロード」と呼んでいるので、直後に「シナプスロードと呼んだ。」と書くと蛇足になります。書かなくてもわかりますからね。



「今に、アンドロイドたちがやってきますよ。海上保安庁に報告がいったようです」

⇒「海中保安庁」ですよね?




※構成と展開について

 構成としては、「シナプスロードとパラノイド」部分は分けたほうがよかったかもしれません。ここだけ1話4000字超になっていて、読み手が多少つらいかもしれません。

 まあ視点ががらりと変わりますから、それほど読みづらいというところでもないのですが。

 展開としては「ミオンとセーラが宇宙苔を倒した」ところまで順調に流れてきましたから、ここまでひと息に読んでこられますね。

 ピンチに陥って反撃して倒す。

 バトルものの典型的な勝ちパターンなので、安定した面白さがあります。




※総評

 ここまでの総評ですね。

 宇宙苔によって海に沈められた地球、という設定が面白いですね。

 書かれていませんでしたが、たとえば「どこからか水が湧いてきた」とか「宇宙苔が巨大な氷を持ち込んだ」とか、技術的な説明があると、より物語にリアリティーが出ると思います。

 現状、北極と南極の氷がすべて解けても海面が数メートル上がるくらいだとされていますので、どこからか水が湧いてこないと陸地は埋まりません。

 逆に「陸地が沈んだ」と考えるのも一手ですね。「プレートが崩壊して陸地がマントルに沈んだ」のであれば、どこからか水を調達するよりは説明しやすいと思います。

 この「なぜ陸地が海に沈んだんだろう」という謎の答えを用意しておくと、よりリアリティーが増してSFチックになります。


 宇宙苔が生物に寄生して、人間やアンドロイドを襲うという設定もよいですね。

 下位種は核が体外から見える、という設定はよくあるものなので、とくに可もなく不可もなしです。

 アンドロイドであるミオンとセーラが主人公になっていますよね。

 都度指摘しましたが、セーラのキャラはすでに立っています。

 対してミオンのキャラが弱かったので、もう少しミオンのしぐさやクセなどを書いて、「こんな子いそう」と思わせるように書くとリアリティーが増してキャラが立ってきます。

 とくにミオンのほうが主人公格なので、ミオンの微妙なしぐさは書きづらいと思いますが、そこを乗り越えると一気に大衆ウケする作品に仕上がると思いますよ。


 最後に入れられた「謎のふたり」も、これからの展開を面白くしてくれそうな描写ができています。

 このまま長編一本書き切ってもいいですし、ここまでで『カクヨム甲子園』に出しても面白いかもしれません。分量をすべて把握はしていないんですけど。


 ですので、総評としては、世界観や舞台が秀でていて、キャラクターはミオンがやや弱く、考証としては「どこから水が」で問われるかもしれません。

 弱かったり問いかけられたりする部分を補強できれば、全体的な満足度はさらに向上しますので、この作品を中編の『カクヨム甲子園』に出さないのであれば、来年の『角川文庫キャラクター小説大賞』を目指してみてはいかがでしょうか。


 以上で総評を終えますね。

 ここまでお疲れさまでした。

 推敲を頑張ってくださいね。



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