03

臨海22世紀

作者 長宗我部 芳親


海中退治譚編

03



構文と誤字脱字など

> 近頃、海底都市から別の海底都市へ人を運ぶ『渡り舟』や物資を送る『輸送船』が不自然にレーダー上から消失する事件が相次いでいるらしい。

⇒『渡し舟』ではなく『渡り舟』でしょうか。「渡りに舟」という慣用句もありますが、舟を指すのなら通常は『渡し舟』ですね。

 また、ここで「らしい」というとミオンたちに判断が投げられているように受け取られるので、ここは「相次いでいるという。」にします。こうすると、アリマさんがそう言っている、という意味合いを出せます。

 もちろん、この事件についてある程度の知識を持っているのであれば「らしい」でも問題はありません。



> そこで、海洋調査局はその事件の解決のため、信号が発っせられている海域まで赴き、事件解決に繋がる一手を打って欲しいとのこと。

⇒「信号が発せられている」ですね。ただここは「信号を発している海域まで赴き、」と書いたほうが読み手の理解が早いのでオススメです。その際「一手を打って欲しい」の助詞「を」との重複が気になるかもしれませんが、「海域まで赴き、」と「打って欲しいとのこと。」が重文になっているので、係り受けは「信号を発している」と「一手を打って欲しい」と別なのは明白です。

⇒あと「海洋調査局」でよいのでしょうか。「02」までは「海中保安庁」という組織が出てきていて、アリマの所属も「海中保安庁」ですよね?

 多くの方がここで頭にハテナがつくと思います。「海中保安庁」内の部局として「海洋調査局」が存在しているのであれば、その説明をしたほうがよいですね。



>昨晩はきっと思う存分、絵本を読んだので上機嫌なのだろう。

⇒係り受けが分断されているので、正しい順に入れ替えます。

>きっと昨晩は思う存分、絵本を読んだので上機嫌なのだろう。

⇒「思う存分」が推量なのであれば「絵本を読んだ」のも推量にならないといけないので、その場合は、

>きっと昨晩は思う存分、絵本を読んだようなので上機嫌なのだろう。

⇒とすれば解消します。



> 直ちに二人は足の裏に内蔵されたスクリューを起動させて推進力を得てから、水中を進み始めた。

⇒助詞「を」が目立ちます。ここも重文になっているので、わかりづらさはとくに感じないと思います。ただ文章としては少し稚拙に見えますね。スクリューはそもそも水中での推進力を得る装置なので、それをあえて書く必要はありません。

> 直ちに二人は足の裏に内蔵されたスクリューを起動させ、水中を進み始めた。

⇒でも普通はわかります。ただ、スクリューの理屈に乏しい年齢の方が読むのを前提としているのであれば、原文ママのほうがわかりやすいはずです。

 知っている人には「蛇足」で、知らない人には「画竜点睛を欠く」という、表現の難しい選択になります。

 対象となる読み手を想定して言葉を紡ぎましょう。



(1)> そう言うと、ミオンはスクリューを加速させる。

(2)> ぐんっと引っ張られるように彼女の髪がなびいた。セーラも慌ててそれに続く。

(3)> 時々、イルカの群れに衝突しそうにさえなったものの、彼女の目の前にはいつもミオンの背中があった。その度に安堵した表情を浮かべつつ、その後を追った。

⇒まず「イルカの群れに衝突しそうになったものの」ですね。ここで「さえ」は要りません。

 次に、(1)(2)はミオンに焦点が当たっているものの、(3)はセーラに焦点が切り替わっているのが気になります。

 ここは「彼女の目の前にはいつもミオンの背中があった。」としているからです。「セーラの目の前にはいつもミオンの背中があった。」と代名詞ではなく固有名詞にすれば唐突感がいくらか和らぎます。また改行の位置を変えると、さらに補強できます。ついでなので文末処理も変更します。

(1)> そう言うと、ミオンはスクリューを加速させた。

(2)> ぐんっと引っ張られるように彼女の髪がなびく。

(3)> セーラも慌ててそれに続いた。時々、イルカの群れに衝突しそうになったものの、セーラの目の前にはいつもミオンの背中があった。その度に安堵した表情を浮かべつつ、その後を追った。

⇒ここで最後3つの文末がすべて「た。」になりますが、この程度ならたいして問題になりません。



> さすがに、これには面食らったようだった。

> それでもすぐに平静を取り戻したようで、まず初めにミオンが紡いだのは、

⇒まず「これには、さすがに面食らったようだった。」ですね。

 次に「まず」と「初めに」はほぼ同語です。漢字だと「先ず」「初めに」なので両方とも「最初」の意です。片方だけでよいですね。



> そして口をつぐむと、二人はしばらく黙々と目的地を目指した。

⇒これ、一見すると「目的地」「目指した」で「目」の字の重複、なのですが、実際には異なります。実は「目指す」は当て字なんです。なので「目差す」とも書きます。だから「目」の字の持つ意味合いが異なるので重複とは見ません。



> 船のGPS信号が発せられているのはこの先だ。二人はそれを機にスクリューをトップスピードまで急加速させた。

⇒「それを機に」の「きっかけ」はなんでしょうか? 前文では「船のGPS信号が発せられているのはこの先だ。」ですから、きっかけになっていませんよね?

 たとえば「進んでいくと消息不明となっていた船のGPS信号をキャッチした。」のなら「二人はそれを機にスクリューをトップスピードまで急加速させた。」のきっかけとしてはじゅうぶんですよね。



> 海流に逃されずに残っている。

⇒ここは少し難しいのですが、わかりやすく書けば「海流に流されずに残っている。」になってしまいますよね。で、同じ漢字を使わないとすれば「潮の流れに洗われずに残っている。」のように表現できます。ただこれって「海岸にある、砂に埋れたものを砂から出す」表現なので、実はあまり合っていません。

 なのでここは「潮に流されずに残っている。」とするのが正しいです。



> ぱっと見たようでは、船らしき残骸は見当たらない。

⇒「ぱっと見渡しても、」かなと思います。原文に近い表現だと「ぱっと見ただけでは、」ですね。



>「少し休もっか」

>「うん」

>

> どうやら近くの岩場に腰を下ろして休憩を取ることにしたらしい。

⇒ここで「どうやら〜したらしい。」と書くと、視点が急にミオンとセーラから離れて独立した人物を感じさせます。そしてその第三者がふたりを観察しているかのような文章です。

 これが伏線となって、実際視点保有者が観察していたのであれば、意図どおりなので原文ママでよいのですが、この文を唐突に出されると「なんで?」という疑問が湧いてきます。



 ふぅ、と軽く一息着いたミオンの上空を小魚達が泳ぎ去っていく。

⇒「一息つく」と「つく」はかな書きが一般的です。漢字だと常用読み以外ですが「一息吐く」と書きます。



> 海流が巻き起こるほどの巨体にミオンとセーラの髪が靡く。

⇒「なびく」は今話の初めのほうで「かな書き」しているので、「漢字」か「かな」かを統一しましょう。



> ミオンは辺りにより一層注意を凝らしながら、一方通行に泳いでいく。

⇒「注意を凝らしながら」は「注意を向ける」「目を凝らす」の混同ですね。

 そして「一方通行」はおそらく書き間違いで「一方向に泳いでいく」が元ではないかなと。



> だが、そのその上に添えられていたのは……

⇒「だが、その上に」ですね。




※構成と展開について

 展開がいいですね。海洋冒険小説のようなテイストで、読み手の冒険心をくすぐります。

 文章もしっかりとしていて、目立ったミスは少ないですね。

 構成はまだ三話目なのでまだ指摘しづらいのですが、01が海、02が海中都市、03が海と流れてきているので違和感はありませんね。04が気になるような構成になっているので、読み手の煽り方も上手です。

 この調子で続きを書いていきましょう。



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